歴史の流れを噛み砕いてみた

エンタメ要素をめいっぱい取り入れて、戦国や幕末の流れを、わかりやすく、ざっくりとお届けします。「超現代語訳戦国時代」という書籍も出版してますので、よければご覧ください。

【第七話「オレたちが? 合体!?」~忍び寄るエコノミッククライシス~】

幕末エピソード7だよ。

おさらいだよ。

勝海舟さんたちアメリカ行く
 ↓
桜田門外の変井伊直弼さん死んじゃう
(おさらいあっさり)

開国しちゃうわ、井伊さん死ぬわ、ドタバタ続きで泣きたい幕府。

それなのに、泣きたい夜追加されるんです。

庶民「ちんたらやってんじゃねーぞ幕府!! もう朝廷の言うこと大人しく聞いとけ!!!」

とうとう一般庶民からも嫌われちゃった。

もともと幕府を嫌ってる尊王攘夷派ってのは、今で言う"意識高い系"(あくまでたとえよ)。

ところが、あることがキッカケで、ノーマルに暮らす庶民にまで尊王攘夷が浸透します。

そのキッカケってのが……"経済"

欧米と貿易やり始めちゃったもんだから、

"輸入""輸出""お金"

それぞれで大問題が発生して、庶民の生活がおびやかされまくったんです。

ということで、このときの経済がどうなったのかを、詳しく説明させていただきます("詳しく"、はウソですね。せいぜい"なでる"程度)。

開国して、欧米との貿易を始めた日本。

「自由な貿易しよー」って条約で決めた通り、幕府が入ってこないから、ちょー自由(ちなみに、アメリカは南北戦争てやつで忙しかったので、一番のお得意様は、イギリス
で、条約では"神奈川"開くってなってたけど、"横浜"に変更。場所的に最高だったらしく、横浜は人気スポットになります)。

そのやり取りの中で起こった問題、まずは"輸入"からいっちゃいましょう。

輸入品の中で一番多いのが、毛織物や綿織物というグッズでした。

でも、今回の条約には関税自主権がない……つまり日本が勝手に税をかけられないんです(わかんなかったらググって!)。

ここぞとばかりに、外国から、ハイテク機械で大量生産した、安ぅーーい毛織物や綿織物がダイレクトで入り込んできます。

たとえるなら、ユニクロ VS ちょっと高ぇー小洒落たブティック』みたいな構図。

すると……

綿織物業の人「あんな安いのが外国から入ってきたら誰も買ってくれないよ!! 商売あがったりだ!!!!」

ってことになり、日本の綿織物業などが大ダメージをくらいます。

では続いて、"輸出"いっちゃいます。

嬉しいことに、日本の、生糸(絹っす)や茶や海産物が、外国で大人気。

特に生糸がスマッシュヒット!

売れる売れる! 売れる売れる売れる売れる売れる売れ…る……売……れ…

とんでもない品薄状態になっちまいます。

すると……

生糸マニア「最近生糸が全然手に入んない! しかも数少ないから値段がメタクソに上がってる! で、なんかそれに引っ張られるみたいに、いろんな商品の値段も上がってる!!!!」

物が少ねーから、値段が上がる。

経済用語いっちゃいましょう(ン、ン……コホン)。

インフレです(物の値段上がる、お金の価値下がる)。

幕府は、

幕府「これはマズいよ…。てか、江戸の問屋さんにおろしてた商品を、直接横浜とかに持っていっちゃうから売れすぎるんだ……。で、物価があがる。
みんなー! せめて、生糸、雑穀、水油、呉服、ロウは、1回江戸の問屋さんに持っていって!」
外国商人「おいコラ。『江戸の問屋を使え』って幕府が命令する……これのどこが自由な貿易だ? あぁ!?」
幕府「……僕も今そう思ってたんすよー」

五品江戸廻送令(ごひんえどかいそうれい)

ってのを出すんですが、外国からの大ブーイングで、この法令も効果ナシ。

インフレまったく止まりません。

最後は決定打、"お金"です。

幕府がハリスさんと交渉したとき、

「貿易するなら、『為替レート』決めないと!」

ってなったんです(「1ドル=〇〇円」みたいなやつ)。

当時、日本には、

『1両』(金の小判)
『1分銀(いちぶぎん)』(銀貨)

っていうお金がありました。

で、

「1分銀を4枚集めれば、金の小判1枚に替えてもらえるよ!」

というシステムです(のちにカンヅメが当たるとかではないです)。

"4分銀=1両"

でございます。

1つここで注意点なんですが、1分銀の"素材"自体にはですね、1両の1/4の価値なんて……ありません。

素材はそんないいもんじゃないけど、

幕府「銀貨のサイズが小さかろうが、価値が低かろうが、『一分銀』て書いてあったら、それは1両の1/4ってことにするからな!」

って、幕府が決めていたんです。

昔の幕府にも、

「お金は国家が作んだよ。ガレキでも国がお金っつったら、そりゃお金だ!」

と、断言したおじさんがいたほど。

乱暴な感じがするけど、なんか似てませんか?

そう、現代のお金の理屈とほぼ一緒("1万円札"の原価は約20円くらいなもん。でも国が、『この紙には1万円分の価値があります!』って言い張って、国民全員が『ある!』って納得してるから、1万円札として成立しております)。

江戸幕府、通貨(お金)に関してはちょっと進んだ感覚持ってたんです。

さて、

外国には『1ドル銀貨』というお金がありまして、話し合いはお互いの銀貨について。

岩瀬(岩ちゃん)「1ドル銀貨調べたら、小判の1/4の価値なんすね! うちの1分銀と一緒だ!
ということで、
1ドル銀貨=1分銀
でいきましょう! 日本の食べ物で1番美味しかったのなんです?」

ハリス「いや次の話題いくな!! (それぞれの銀貨を天びんに乗せると……)全然釣り合わねーじゃねーか!! 条約に『同じ種類を同じ量で交換』ってあったろ!」
岩瀬「いや、『一分銀』て刻まれてれば、その銀には価値があって…」
ハリス「なんじゃその論理! 重さ全然違うのに、『これ一緒の価値ですねー』って、詐欺のやり口じゃねーか! 1…2…ようやく釣り合った! 1分銀が3枚で、やっとうちの1ドル銀貨と一緒の重さだよ! てことで、
1ドル銀貨=3分銀
でいかせてもらう!」
岩瀬「えーー!!! やだーー!!!!」

リアルな銀の重さで話を進めるハリスのやり方は、この時代の世界の常識。

幕府のちょっと進んだ価値観は、まったく受け入れてもらえず、

"1ドル銀貨=3分銀"

となってしまいました。

ちなみに、海外では、日本より金の価値が高く

"1両=4ドル銀貨"

いいですか? まとめますよー。

1ドル(銀)=3分(銀)=0.75両(金)=3ドル(銀)

小数点がない、わかりやすい数字にすると、

4ドル(銀)=12分(銀)=3両(金)=12ドル(銀)

薄々お気付きでしょうか?

つまり……

ハリス(仮)くんが、日本に4ドル銀貨を持ってきたとします(日本来たよ)。

で、日本の銀に替えたら12分になる(日本で両替だよ)。

それを小判に替えたら3両です(日本で"金"に両替だよ)。

で、海外にその3両を持って帰って、銀貨に替えたら12ドル(帰国して両替だよ)。

出かけに持ってた4ドルが、両替繰り返しただけで、12ドルになっちゃう……。

魔法です。
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たたいて増えるビスケットとなんら変わりない(いいえ)。

外国人「両替するだけで金持ちになれる……日本に行って、"金"持って帰るぞーーーー!!」

てことになり、日本から金がブヮーーーーー!! っと出ていっちゃったんです。

もう日本経済大混乱。

幕府「ヤバーーーーー!! とりあえず"金"の価値下げるべ! そうすれば外国人も金に食いつかなくなる! 新しい小判作るぞ!」

テンパった幕府は、前より価値の低いニュー小判を作って、金が出て行くのを防ぎます(『万延小判(まんえんこばん)』てんだ)。

おかげで、金の大量流出はストップ(ホッ)。

しかしホッとしたのもつかの間! 今度はお金の価値が暴落しちまい、物価がググンッ! と上がってしまう……

これぞ、恐怖のハイパーインフレ

コンビニ行ったの想像してください。

昨日150円で買えたアイスが、今日は450円になってたら、「おい、ハーゲンダッツより高ぇーじゃねーか…」って愕然としませんか?

幕末では、そんなようなことがリアルに起こり、ついに国民大爆発。

怒りの庶民「なんでこんなに生活苦しい…? そうだ、幕府が勝手に開国したからだ……。
もう幕府なんかに任せてらんねぇ!! 朝廷に従え!!! 外国人も日本から追い出せ!!!!」

とまぁ、こんな感じで、庶民の尊王攘夷につながったわけです(「なるほどねー!」ってなりました?
ホントはね、『1ドル=3分』にされたあと、幕府はとんっ…でもないカラクリ考えて、外国に対抗するんですけど、文字数ハンパないことになるので、やめときます。
あなたにお会いしたとき、直接お話します)。

 

さ、井伊さん亡きあと、幕府の政治を動かす安藤信正さん。

この尊王攘夷の強風を、まともにくらいます。

安藤信正「く……なんてえげつない攻撃……立ってるのがやっとだ……。こうなったら、あれを使うしかない。
いくぞ! 公武合体!!!

ナレ「説明しよう! 公武合体とは——。
"公"の『朝廷』"武"の『幕府』。2つの機関が力を合わせ、国のピンチに立ち向かおうという大作戦のことであーる。
朝廷と仲良くなれば、尊王攘夷派もダマるだろうと思ったのであーる」

わらの家となってしまった幕府を、もう一度レンガの家にするため、朝廷と仲良くしようと目論む子ブタさん。いや安藤さん。

ガッツリ手を組むには、家同士がつながるのが1番……家がつながる方法と言えば……

結婚です。

そこで、幕府は孝明天皇の妹、

和宮(かずのみや)

さんに目をつけます。

14代将軍・徳川家茂(いえもち。跡継ぎ問題を制した、あの"よしとみ"ちゃんです)

ちゃんのお嫁さんになっていただきたいと

安藤信正「おねしゃーーーーす!!!」

朝廷に頼み込むんです。

ただ、和宮さんには"有栖川宮熾仁親王(ありすがわのみやたるひとしんのう)"という長い名前のフィアンセがいるし、何より本人が、

和宮「江戸に行くなんて絶対に嫌どすえ」

めーっちゃくちゃ嫌がっている。

孝明天皇も、「嫌がる妹をムリには…」となり、これでスリーアウト、ゲームセッ……トになる直前でした。

意見を求められた1人の公家のアドバイスによって、様子が変わるんです。

岩倉具視「幕府は自分たちに力がないのを痛感した上で、朝廷の権威を欲しがってます。
和宮様と将軍の結婚を望むのなら、叶えてやりましょう。
そのかわり! ……交換条件を出すんです。
まず、政治の決定権は"朝廷"で、その命令を聞くのが"幕府"。この形を認めさせる。
さらに、外国との条約をブッ壊して、攘夷することを約束させるんです」

駆け引きうますぎ、岩倉トモミン

ほとんどの公家さん=政治オンチの中で、なぜか抜群の政治力を発揮するトモミンのこの案が採用されます。

幕府「やったー!! 和宮さんお嫁に来てくれるーー!!」
朝廷「喜ぶのはいいですが、和宮さんをお嫁に出す条件聞いてますよね?」
幕府「…………優しくする」
朝廷「それは当たり前です。じゃなくて?」
幕府「…………攘…夷…だったかな」
朝廷「だっかなじゃなく、それです。約束してくれるんですよね?」
幕府「…………10年以内になんとか」

幕府は10年以内に条約をチャラにして、鎖国を復活させることを約束したのでした。

泣きたいのは和宮さんです。

この約束により、江戸へ行くことが決定するんですから。

儚い乙女ゴコロなんてガン無視。

婚約者と引き離され、慣れない土地へ送られる10代の女の子。

国のトップを背負わされ、人生を選ぶことが許されなくなった少年。

家茂と和宮……奇遇にも同い年の15歳、結婚したときでさえ17歳。

幕府と朝廷に翻弄され、強制的に一緒になった2人に救いがあったとするならば……

仲の良い夫婦になれたこと。

似たような境遇に、鏡を見てるような気持ちになったのかもしれない……ただ単に会ってみて好意を抱いたのかもしれない……詳しいことはわかりませんが、とにかく心が通じ合った……。

たくましさと愛情に、年齢なんて関係ないんですね。

若い2人のモヤモヤと引き換えだけど、これでめでたく! 公武合体! ……

尊攘派「おい幕府!!! 和宮様を人質に取って、朝廷にいろいろ要求するつもりだろ!! やることが汚ねーぞ!!!!」

しないんすよ。見事に裏目に出ちゃって。

和宮さんが幕府に嫁入りすることによって、尊攘派は激怒も激怒。

そのせいで攘夷熱がスーパーヒートアップ。

ハリスさんの通訳を務めていた、ヒュースケンさん殺害(ヒュースケン殺害事件)。

東禅寺(とうぜんじ)というお寺にあった、イギリスの公使館、襲撃(第一次東禅寺事件)。

外国人襲撃のオンパレードです。

外国「もう頭にきた……やられたらやり返す…」
幕府「え? …ちょ、落ち着い…!」
外国「賠償金だ!!!!」
幕府「ぅ…………はい……」

外国の方からの猛抗議を受けるのは幕府。そのつど賠償金を支払うのも、幕府です。

やっぱりもう無理なんだろうか? 尊攘派とは分かり合えないんだろうか?
そうよ、そうなんだわ、私みたいな幕府が高望みしちゃダメだったのよ……しょせん公武合体なんて、うたかたの夢……。

ネガティブ幕府が崩れそうになったその時

長井雅楽「あきらめないで!!」

遠く離れた長州藩から、奇跡の助け舟が登場します。

キッカケとなったのは、

長井雅楽(ながいうた)

さんていう藩士が提出した

航海遠略策(こうかいえんりゃくさく)

って意見書。そこには

『条約やぶって攘夷するなんて、国際ルール的にも、軍事力的にもムリムリムリ。
それよりガンガン貿易して日本を強くし、世界を圧倒して、外国が貢ぎ物もってくるぐらいにしましょうよ。
だから朝廷はすぐにでも、鎖国と攘夷をやめて、『海へ飛び出せ! 日本のプライドを外国へ見せつけろ!』って幕府に命令してください。
そうすればこの国の意見は統一されて、政治も安定すると思うよ。 うたちゃんからでした』

というようなことが書かれていました(だいぶ噛み砕いたら、こう)。

これ、うまいことできてまして、

《実際に貿易はする》ってところで開国派を満足させ……
《他の国を倒して、将来トップに立つのは日本》ってところで攘夷派のプライドをくすぐる……。

どちらも納得する可能性大の、ミラクル意見だったんです。

毛利敬親(もうりたかちか。長州の殿)「うん、アリかも! うちの藩論(藩の意見や方針)にしよう!」
長井雅楽「ありがとうございます!! これ朝廷と幕府にも提出したいんで、お出かけしていいですか?」
敬親「そうせい」
(敬親さん、家臣の意見にだいたい「そうせい」っていうから"そうせい侯"って呼ばれてました。)

公武合体のために、そうだ京都行こう。

朝廷「なにこれ、すっごくいい~。ときめいた~。これうたちゃんが考えたの?」
長井「はい」
朝廷「これすごくいいから幕府ちゃんにも教えてあげて!」

あと1歩で公武合体、そうだ江戸行こう。

幕府「なにこれ、すっごくいい~。華やいだ~。これうたちゃんが考えたの?」
長井「はい」
幕府「最近、公武合体がうまいこといってなかったから、こういうのホント助かる~!」

朝廷にも幕府にもガッツリ好印象。

公武合体ファンのみなさんお待たせしました。ようやくです。これでようやく公武合体

安藤「グワァ!!!!!」

……絶対アクシデント起こった声。

幕末あるある

『何かに反対してるヤツ、だいたい過激な事件おこす』

が発動して、公武合体の中心メンバー安藤さん、襲われちゃいます。

尊攘派の水戸浪士6人に、江戸城坂下門外(さかしたもんがい)で襲われた安藤さん。

やり方は、ほぼ"桜田門外の変"(名前も坂下門外の変)。

幸いなことに、ケガはしたけど命に別条なし。

でも……傷を負った"部分"がよくなかった。

安藤の部下「安藤さん大丈夫ですか!? でも命が助かってよかったー。ところで、どこをケガしたんですか?」
安藤「背中」
安藤の部下「!」
安藤「!」
安藤の部下「!」
安藤「!」
安藤の部下「!!」
安藤「なになになになに!!? みなまで言って! 背中ケガしたらヤバ………あヤベーわ」

政治の話ばかりで忘れがちですが、みんな"武士"なんです。侍なんです。

背中なんかやられたら、

『背中の傷は武士の恥だ!』=『テメー、武士のくせに、敵に背中向けて逃げようとしたんじゃねーのか!?』
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てことになるんです。

背中やっちゃった安藤さんに「サイテー!」「それでも武士か!」という嵐のような批判が飛んできて、最後は背中キズ野郎のレッテルを背中に貼られ、なんと老中に背中を向けることになります(辞めさせられたってことね)。

さらに間の悪いことに、"あるウワサ"が原因で尊攘派がバーリバリ活気付いちゃう。

安藤さんいなくなって、"あるウワサ"尊攘派元気になって……紙袋から落としたオレンジが坂道を転がり落ちて行くように、公武合体の人気はなくなっていったのでした(オレンジの表現はどうしても入れたかったんです)。

そして、ここ長州藩でも、動き出す尊攘派

久坂玄瑞(松陰センセーの愛弟子)

桂小五郎(かつらこごろう。ちょー有名人。西郷隆盛大久保利通と3人合わせて『維新の三傑』なんて呼ばれたりしてます)

といった、吉田松陰のDNAが暴れ出すんです。

久坂玄瑞「『航海遠略策』にずっと反対してきたけど、今がチャンスだ!! 長州の藩論(藩の方針)、尊王攘夷に変えてやる!!!」

息巻く久坂さんたちは、朝廷に

久坂「うたちゃんが提出した文書、よーく読んでください。朝廷のことディスってますよ」
朝廷「え? マジで? ……あーこれちょっとディスってるね」(なんかディスってる風に捉えられる部分があったみたいです)

チクりを入れ、

朝廷「ちょっと長州さん。あんたんとこのうたさん、朝廷のことディスってんじゃん!」
長州藩「申し訳ございません!! 本人によーく言って聞かせますんで! おい、うた! テメ1回帰ってこい!!」

京都にいたうたさんを、長州に帰国させることに成功します。

そうなると、長州藩内では

長州藩の人たち「うた! コラぁ!! テメーの航海なんたら策で朝廷から怒られたじゃねーか!! 責任とれ!!! で、やっぱ尊王攘夷だ!」

いとも簡単に藩論は尊王攘夷に変わり、公武合体を推進した雅楽さんは、追いやられて追いやられて、ついに……

切腹を命じられたのでした。

のちに、尊王攘夷のリーダー格となっていく長州藩

この頃から、松陰の意志を受け継ぐ者たちが、藩の中心を担っていくことになります。
 
それはそうと、尊攘派を活気付かせ、公武合体が弱まるキッカケとなった"あるウワサ"とは……。
実は、あの藩がまた動き出したんだけど、ちょっと事情がややこしくて……えーと……

説明に手間取るので、次回!

 

【海と雪のサムライ】

幕末エピソード6と参りましょう。

参る前にはおさらいと参りましょう。

井伊さんの「許可ナシ条約」に、みんなちょー反発。
  ↓
斉彬さん反撃しようとするけど、死んじゃう。
  ↓
水戸藩に「戌午の密勅」が下る。
  ↓
井伊さん「なんだよそれ!」と怒り、"安政の大獄"開始。
  ↓
安政の大獄から西郷さんと月照さん薩摩に逃げるけど、月照は拒否られる。
  ↓
二人海に飛び込んじゃう。西郷さんだけ助かる。
  ↓
松陰センセー、安政の大獄の犠牲に。

『批准(ひじゅん)』て聞いたことあります?

国の代表者が決めてきた条約に、国家が「よし! これで決定!」って認める最終的な手続きを『批准』て言うんです。

スマホ契約するとき、本体ゲットして、支払い方法も決めたけど、書類にサインしないと使えない——あんなようなものです(規模違いすぎるけど)。

日米修好通商条約のラスト手続きのために、アメリカはワシントンに向かうことになる日本。

外国奉行(外務省ってノリかな)の人たちは、ポーハタン号(アメリカの船)に乗せてもらいます。

外国奉行「お願いします!人数多いって言われたんで、削って77人です!」
ポーハタン号艦長「多いんだよなぁ多い。まだ多いんだよ」

使節団77人が乗り込み、太平洋を渡ります。

それとは別に、「ポーハタン号の護衛や、万が一の事故に備え、もう一隻、船出しといた方がいーんじゃねーか?」ってことになり、『咸臨丸(かんりんまる)』という船を出動させることに。

これに乗り込んだのが

勝海舟(勝さん、このとき艦長)

ジョン万次郎(すでにアメリカを知ってるあの人)
福沢諭吉(ご存知一万円札のあの人)

という有名人たちです。

この船に乗り込むのは日本人だけ。

船+日本人だけ+渡米=初体験。

そう、咸臨丸の航海には、ポーハタン号の護衛のほかに、初めて日本人の力だけで大海原を渡り、アメリカにたどり着くという、大きな目的が詰め込まれていたんです。

勝海舟「とうとう……とうとう日本人だけで太平洋を……ついにこの日がやってきた(感動)」
司令官「えー、日本人だけだと不安なんで、ブルックさんたちアメリカ人の方々にも乗っていただくことにします」
ブルック「ブルックです。いい船旅にしましょう」
勝「…………誰だテメェこら(怒)」

アメリカ人も乗っちゃいました。

ブルックさんはじめ、アメリカ人の乗組員が何人も乗船して、日本人の夢、爆破。

ここから勝さん、ちょースネてしまいます。

しかも、いざ出航してみると、

勝「………オロロロロロロロロロ……」

船酔いで吐いてました。
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でも、勝さん以外の日本人乗組員はしっかりと

乗組員「オロロロロロロロロロ……」

吐きまくってました。

出航してまもなく、海が大荒れ。

ジョン万次郎さん、福沢諭吉さん以外の日本人、ちょーぜつな船酔いで全員死亡(たとえね)。

さらに、日本人はまだ船の扱いに慣れておらず、実質的に船動かしたのはブルックさんたちだったそうです。

アメリカの人たち、いてくれてよかった(デーオー)。

(艦長として機能してないのに文句ばっかり言うし、航海の途中に「ボートおろせ! オレは帰る!」とかわがままを言ったらしい勝さん。
福沢諭吉さんの目には、「なんだコイツは……」って感じに映ったらしく、ここから2人、メチャ仲悪くなります。

さらにこの航海にはこんなエピソードも。

ブルックさんは、"実際にはアメリカ人たちが船を動かした"ことを日記に書いていました。
ですが、開国したばかりの日本がバカにされないよう、日記の公開を自分の死後50年間は禁止したり、部下にも固く口止めしたそうです。
なので、この船旅の真実がわかったのは1960年代になってから……。
なんて泣ける話なんでしょう。
ブルックさん、最高すぎる)。

やっとの思いで、咸臨丸とポーハタン号はサンフランシスコに到着。

勝「アメリカだーーーーー!!!!!」

サムライたちがアメリカの土を踏みしめ、日本が国際化へと歩き出した瞬間でした。


勝さんたちがグローバルな展開をしてる一方、日本でローカルな大事件が起こります。

その中心にいるのはもちろん、

大獄マシーン・井伊直弼

"安政の大獄"をまき散らした結果、多くの人からエグい憎しみと、ドデカい反発を爆買いした井伊さん。

特に、家老や藩士切腹&死罪にされてる水戸藩の怒りのボルテージは、とんっ……でもないことになっていました。

水戸藩「許さねぇ……井伊…ゼッテー許さねぇ!!!!!!」

しかし、井伊の赤鬼はそんなのおかまいなし。

怒りと悲しみの水戸藩に対し、

井伊直弼『戌午の密勅』はお前らが持っていていいような代物じゃないんだ。
前から言ってる通り、こちらに渡せ。
期限までに返せないようなら、身分も領地も、ボッシューする」
水戸藩「まっすぐなパワハラ!!!!」

なんと、『戌午の密勅』を返せと脅してきたんです。

ハラワタが煮えくり返って、いい感じのトロみが出てる水戸藩

でも、命令に従わなければ藩の存続が……。

水戸藩「幕府に……密勅を返そう」

もうしょうがねーよの空気が大多数を占めますが、一部がこれに猛反発。

返さない人たち「渡すわけねーだろ!!もし返すとしても、幕府じゃなくて、朝廷に返すわ!!」

やがて、水戸藩内部はバチバチの大ゲンカに発展し、斬り合いまで起こる事態に。

お互い一歩も引かない中、ヒートアップする"返さない人たち"の一部は、恐ろしい答えにたどり着きます。

返さない人たち「おい、あいつ殺そうぜ」

井伊直弼暗殺計画

鼻水出ます。ヤバすぎて。

今で言うなら『総理大臣暗殺計画』です。

止まりません、鼻水。

さらに、井伊を殺ってやると意気込んだのは水戸藩だけじゃありませんでした。

この激ヤバ計画に、薩摩の

精忠組(せいちゅうぐみ)

ってのが加わるんです。

こちら、西郷さんが中心となって結成された、4、50人の若者男性ユニット(このとき西郷さんは奄美大島にセンプク中ねー)。

優秀な人材がそろった精忠組ですが、西郷さんに代わって、中心的存在になったのが、

大久保利通(おおくぼとしみち。これまたちょー有名人)

さんでした。

大久保さんは言います。

大久保利通「オレたちは斉彬様の遺志を継ぐ……井伊をぶっ潰すため、全員で脱藩だ!!!!!」

完全に仕上がってます。

大犯罪(井伊暗殺)のためには、手前の犯罪(脱藩)なんて当たり前。

そして、斉彬さんの遺志(幕府の改革)を実現するためには、井伊の暗殺しかないと思いこんでる……。

視野が15度くらいの状態です。

精忠組「井伊!!!その首洗って待ってろ!!!!!」

しかし、息巻く男性ユニットに、思わぬストップがかかります。

この時、薩摩の藩主は、斉彬さんの甥っ子の

島津忠義(しまづただよし)

って人。

でも、実権を握っていたのは、忠義のパパ(でもあり、斉彬さんの弟でもある)、

島津久光(しまづひさみつ)

という人でした(『国父』なんて呼ばれてたよ)。

そんな薩摩の支配者親子から、精忠組に対して、忠義くん名義のお手紙が届くんです。

『タイミングがきたら斉彬さんの遺志を継ごうと思ってるんだー! それまで、僕のいたらないところを助けて、一生懸命尽くしてくれないかなー! だからー、暗殺行くのやめてーー!!」

自分とこの藩主から、「軽はずみな行動はやめてよ」というお願い。

でも、ダンスボーカルユニット精忠組(違いますよ)は、バキバキに仕上がってるんです。

いくら支配者親子に言われようが、暗殺やめるわけないんです。

大久保「よし!やめよう!」

やめました。

すぐやめたんです。

当時の上下関係からすれば、殿自らが、下っ端の若ぇーヤツらを説得するなんて、異例の出来事。

しかも、手紙には『斉彬さんの遺志を継ぐ』と書かれている。

自分たちと一緒のことを考えてくださってるじゃないか……。

藩主親子から直々の説得、オレたちと思いは一緒……感動がサーティワンアイスのダブルのような重なり方をして、精忠組は、

精忠組「暗殺、やーめた!」

となったわけです(全員じゃ…ないんですけどね)。

ただそれでも……水戸の志士たちが、暗殺プロジェクトを止めることはありませんでした。

井伊直弼抹殺のシナリオは、着実に書き進められていたんです。

襲撃の日時は、すべての大名が江戸城に向かう日の朝に決定。

実行部隊は、水戸志士17名+薩摩志士1人の18名(計画に関わってる人はもっといます)。

当日、配置についた志士は、『武鑑(ぶかん)』を持って、大名行列を見物する田舎の侍を装うことに(『武鑑』てのは大名や役人のプロフィールを書いた、『プロ野球選手名鑑』的な本)。

さらに、自分たちの行為で藩に迷惑がかからないように退職願を書き、すべての準備が整います(水戸藩をやめた浪士(仕えるのやめた人)ってことで、"水戸浪士"って呼んだりするよ)。

そして……

安政7年3月3日(1860年3月24日)

江戸城桜田門外(東京都千代田区霞が関)。

季節外れの雪が降り、ふわりとした大きな結晶が、あたり一面を真っ白に覆いつくす朝。

暗殺計画、実行の時が迫ります。

平静の薄皮一枚下に暴れる鼓動を感じながら、標的を待つ浪士たち。

午前9時

雪の勢いも弱くなった頃、彦根藩上屋敷(現在の憲政記念館あたり)から、井伊直弼を乗せた駕籠(かご)が、60人ほどの行列と共に出てきます。

動き出す作戦。

歩みを進める井伊家の大名行列に、1人の男が近づいてきます。

何事かと身構える彦根藩士の元に駆け寄った男の手には、1枚の訴状。

何を訴えたいかは知らないが、直訴するその男を制止しようとした、その刹那、

ヒュッ……

直訴を装った水戸浪士は抜刀し、

ザッ!!!!

目の前の彦根藩士を斬りつけたのでした。

彦根藩士たち「!!」

とっさの出来事に、動きが止まる彦根藩士たち。
脳の処理速度が、目に映る事態を理解しかけた瞬間、

次の衝撃が耳に届きます。

パーーーーーーーン!

井伊が乗る駕籠をめがけ、放たれるピストル。

"襲撃開始"の合図もかねていたこの銃声で、見物人の群衆から、一斉に飛び出す水戸浪士たち。

疾風のような初速で駕籠に向かい、怒涛のごとく彦根藩に襲いかかったのでした。

斬りかかってくる者たちの苛烈で恐ろしい空気に、お供の何人かはその場から逃げ出しますが、残った10数名の彦根藩士は、主君を護るため即座に戦闘態勢へと切り替えます。

しかし、この日の天候が、彦根の侍に災いをもたらしました。

雪のため雨合羽を羽織り、刀の柄や鞘に袋をかぶせていた彦根藩士は、すぐに太刀を抜くことができなかったのです。

初動の遅れから、相手の刀を手で受け止めた者も。

雪の上に落ちてゆく指や耳。

それでも反撃に出た彦根藩士は、水戸浪士と激しい斬り合いを繰り広げます。

鬼気迫る攻防戦の末、護る者が一人、また一人と倒されていき、ポツリと置き去りにされてしまった井伊の乗る駕籠。

水戸浪士たちがすべてを投げ出し、追い求めていたターゲットが今目の前に……。

水戸浪士「かかれーーーーーーーーーー!!!!!!」

ズスッ!! ズスッズスッ!! ズスッ!!!

駕籠を突き刺す、数本の刀。

自らの剣が人の肉を貫いた感触をその手に確かめながら、志士たちは乱暴に駕籠を開け、中に潜む"悪"を、力任せに引きずり出します。

居合の達人だった井伊直弼

それがなぜ、無抵抗のまま水戸浪士の攻撃を許したのか?

実は、駕籠にむけて放たれた最初の銃弾が、腰から太腿にかけて命中しており、立ち上がることもままならなかったのです。

何本もの太刀を浴びて、瀕死の状態となった井伊。

血にまみれながら地面を這う男の首をめがけ、

薩摩浪士・有村の刀が振り下ろされ、

有村「キィエーーーーーーーーーーーイ!!!!!!」

ザンッ!!!!

男の、息の根は止まります。

――己が信じる道を、粛清という手段で突き進んだ豪胆な政治家……井伊直弼がここに絶命したのでした。

刀の先に井伊の首を突き刺し、勝鬨(かちどき)を上げる有村。

水戸浪士たちは、その声で目的が達成されたことを知り、急ぎその場を離れ逃走。

襲撃の現場には、二度と動かなくなった人間と、

血液が染み込んだ雪が、ただ残っていたのでした。

大勢の目撃者がいる中、幕府のNo.2が殺害された、このとんでもないテロこそ、みなさん1度は耳にしたことがある

桜田門外の変

という大事件でございます(襲撃は10数分間か、もっと短かったかもなんて言われてます)。


井伊直弼が殺害されたという報告が幕府に届くと、飲んでたお茶を

老中たち「ブハっ!!!!!!」
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いっせいに吹き出す老中たち(イメージです)。

老中たち「マジでか!!!? ちょ、どうしよ!!!? おろおろ……おろおろおろおろ」

おろおろとテンパることしかできない連中の中で、老中の一人

安藤信正

さんて人は、冷静に分析します。

安藤「おい……おいおいおいおいおい! 激ヤバだぞ!!
大老をまもれなかったとなると、幕府の威厳は地の底に落ちる……。
それだけじゃない!! 
オレたちは、井伊さんを暗殺した水戸藩を処分しなくちゃならない。たとえ浪士がやったこととはいえだ。
ただでさえ、水戸は井伊さんにボロクソにされてんのに、ここでさらに処分加えちゃったら……水戸藩怒り狂って何するかわかんないぞ……。

そして彦根藩
藩主が跡継ぎ決めてねーのに、イキナリ死んじゃったら、お家断絶って決まりだ(「〇〇家失くすねー」ってこと)。今回のケースはまさにそれ。
家を断絶された彦根の連中は……確実に水戸に復讐する……。
幕府と関係が深い、御三家(水戸)と譜代(彦根)が全面戦争なんてことになれば……

幕府………終わっちゃうぞ……。

さらに今、井伊さんの首は奪われた状態……
それをどこかに晒されたりなんかしたら、尊王攘夷派の勢いがますます強くなり、力のない幕府は……もっともっともっともっと…」
伝える人「申し上げます! 大老の首を奪った薩摩のヤツは、彦根の人に斬られ、その場で自刃(切腹)! で、井伊さんの首、若年寄の遠藤さんのお家にあります!」
安藤「不幸中の幸い!!!! よし……目撃者はたくさんいただろうが、こうなったら……」

安藤さんがひねり出した驚きの作戦。

それは、

安藤「井伊直弼はまだ"生きている"――。ことにします!!!」

です。

たしかに、井伊さんが"生きている"のであれば、最悪の事態を避けられるんです。

彦根藩水戸藩のお家断絶も、2つの家の戦争も。

まぁでも……死んじゃってっから。

にも関わらず、安藤さんは事実をねじ曲げて、公式発表します。

安藤「えー井伊さんですが、桜田門外で襲われ、大変なケガをされました。ですので、彦根藩には跡継ぎを決めていただきます」
記者(そんなのいねーけど)「井伊さんは桜田門外で首を斬られた。目撃者もたくさんいるみたいですが?」
安藤「各藩からお見舞いの方が来られてるようですし、将軍からもお見舞いの品が届けられてます」
記者「ちょっと聞いてます? なんで亡くなられた方にお見舞いが必要なんです!」
安藤「井伊さんが1日でも早く"ご病気"を治され、政務に復帰される日を……」
記者「最初ケガって言ってたろ! 病気に変わってるじゃないか! なにを言ってるんだ!」
安藤「では、この辺で失礼します……」
記者「ちょっと安藤さん! 素直に認めたらどうです! 井伊さんはもういない! そうなんでしょ! 安藤さん! 安藤さん!!……」
(以上、政治家vs記者のノリでお届けしてみました。)

今も昔も、政治家はちょー強引。

このピンチを乗り切るため、井伊さんはケガから急病にかかり、ゆーっくりと亡くなっていった……ことにされたのでした(井伊さんのホントの命日は「3月3日」ですが、世田谷の豪徳寺にある井伊さんのお墓には「3月28日」となっているのはこのためです)。

ここで少しウワサ話。

井伊さんをヤッた水戸浪士に、暗殺指令を出した黒幕がいるというのです。

それが、井伊直弼のライバル的存在だった、あの

"攘夷おじさん徳川斉昭"

なんてささやかれたりしてるんです……。

で、この半年後、攘夷おじさん斉昭は、心筋梗塞で亡くなるんですが、ホントは彦根藩が暗殺したんじゃないかって言われてたり……。

こちら、どちらも証拠がない、真相は闇の中パターン。

このミステリー、名探偵のあなたは解決できるかな?(は?)

さ、幕府の中、ちょっと変わるよー。

桜田門外の変による大問題をテキパキっと処理した安藤さん。

この人が幕府の最高責任者のような存在になっていくんです(阿部さん→堀田さん→井伊さん→そして安藤さんていう流れっす)。

安藤さんは、井伊さんが進めた"ドギツイ"やり方を否定します。

安藤「今回リストラされる方を発表します!それはこの中にいる…………」
井伊派閥の老中「………………」
安藤「………………………………」
井伊派閥の老中「…………おい! 早く言っ…」
安藤「全員!!」
井伊派閥の老中「全員かい!! なんでジラした!? もてあそぶな!!」

井伊さんの息のかかった老中をリストラ。

逆に、井伊さんにリストラされていた、

安藤「この方に復活してもらいたいと思います! 久世さん!」
久世広周「よっしゃ戻れた!! みんな、これからよろしくな!」
井伊派閥の老中「オレたちゃ辞めんだよ!!」

久世広周(くぜひろちか)

さんて人を復活させ、共に幕府の政治を動かしていったのでした(『久世・安藤政権』なんて呼ばれてたりします)。

ここから安藤さんは、あることを"完成"させるために奮闘するのですが、そこにはデッカい落とし穴が……。

そんな次回の物語に深く関わってくるキーワードは

『合体』です。

ではでは。

 

【降りそそぐ罰の終わりには、愛しき人へのメッセージ】

幕末エピソード5でございます。

そして、まずは前回のおさらいでございます。

尊王攘夷の人たち、条約にはんたーい!
 ↓
堀田さん、朝廷に許可求める。朝廷「え、ムリ」
 ↓
将軍の跡継ぎ問題も起こっちゃう。
 ↓
慶喜くん(一橋派) VS 慶福ちゃん(南紀派)
 ↓
井伊直弼大老になって、次の将軍は慶福ちゃんに決定!
 ↓
大老パワーで、朝廷の許可ナシに条約GO!

とうとう、ニーベーシューツージョークー(日米修好通商条約。略したらお経みたいになった)を結んだ日本。

待っていたのは……

オランダ「どぉーも……。聞いたとこによると、アメリカといい感じになったんだってー?」
日本「ど、どうしたんですか……いつものオランダさんじゃな……は! まさかあなたも!」
オランダ「そのとーりだよ!」
日本「きゃっ!」

日蘭修好通商条約締結。

ロシア・イギリス・フランス「オレたちもだよ!!!」
日本「きゃーーーーー!!」

日露、日英、日仏、修好通商条約締結。

「これデジャブ?」というような出来事がおこり、『むすんでひらいて 幕末ver. vol.2』を歌い上げます(こちら、『安政の五カ国条約』って言うんで、暇な時にでもつぶやいてみてください)。

富・名声・力…幕府の全てを手に入れた男

"大老"井伊直弼

彼の放った一言は、人々を海へ駆り立てた

井伊直弼「条約か? 結びたきゃ結んでやる。開け! 開国に必要な勅許は置いてきた」

世はまさに、大開国時代!!

開国反対派「やかましいわ!!!! 気取ってんじゃねーぞクソハゲ!!! 何が『開国に必要な勅許は置いてきた』だ!! 勅許がねー条約なんて認めてねーわダボが!!!」

大開国時代急ブレーキ。

スゲー勢いで反対されます。

前回お伝えした通り、『天皇の許可がない条約』による、いわくつき国開きは、

反対派「井伊ーーー!!!! やりやがったなーーーーーー!!!!!」

反対派の逆鱗に触れます。

もー日本全国「井伊ふざけんな!」の遠吠え大合唱。

かつてのライバル『一橋派』のブチギレも止まりません。

一橋慶喜「勅許ナシで条約結ぶってどういうことだ!!!」
徳川斉昭「次の将軍、慶福ちゃんにしてんじゃねーよ!!!」
松平春嶽「バグってんじゃねーぞ、タコスケ!!!」

井伊さんの行動に怒り大爆発の3人は、かわるがわる江戸城に押しかけ、飛びかかる勢いで大抗議。

それに対し井伊さん、

井伊直弼「はい…はい…おっしゃる通りです。ええ…はい…ごもっともでございます」

意外にも真摯な態度で神対応

ですが、後日……

井伊「江戸城に上がるのは、各々に決められた日がある。にも関わらず、あんたらは"それ以外の日"に来た……これ、ルール違反だ。はい、3人は隠居、または謹慎」
斉昭・春嶽「なにーーーーーーー!!!?」

隠れてた悪魔出現します。

でも、ここで一言物申したいのが慶喜くん。

慶喜「ちょっと待て! オレは決められた日に江戸城行ったろ! なんで処罰されんだ!?」
井伊「…………とにかく謹慎です」
慶喜「だから理由言えや!!!」

慶喜くんの理由は謎のまま、飛びかかってきた3人、まとめて一本背負いされたのでした。

ギャーギャー騒ぐ敵をなぎ倒し、フフフン♪の井伊さん。

ただ、

波乱の幕開け、

ここからなんです。

開演5分前を知らせる1ベルは

『戊午の密勅(ぼごのみっちょく)』

によって鳴らされます(なんだそれは?)。

"戊午"っていうのは、この年の干支。

"密勅"は、天皇がヒミツに下した命令。

ドッキングすると、

『この年に出された、天皇からの秘密の命令』

この命令を受け取る相手は、もちろん幕府ちゃんです。

書かれていた内容は、

・勅許なしで、なんで条約結んだ? どういうことか説明しろ!!

・国の一大事なんだから幕府や御三家や譜代や外様、みーんなで会議しろ! 攘夷もしろよ!歯磨けよ!(歯磨けよは書いてないです。)

この中で、幕府的に激ヤバな部分が……

井伊「『みーんなで会議しろ!』……幕府以外も政治に参加しろってか……」
井伊の部下「どうします?」
井伊「幕府だけでやってきた政治に他の藩混ぜたら、幕府の権力なくなるわバカタレ!! まぁいい…天皇の命令を受け取るのは幕府だけだ。このことはくれぐれも他の藩には内密…」
井伊の部下「水戸藩にも『戌午の密勅』届いてるそうです」
井伊「え、うっそ!!!!!?」
井伊の部下「しかも水戸藩の密勅には、『・この内容を、他の藩にも見せること!』ってP.S.がついてるみたいっす」
井伊「絶対ダメーーーーーー!!!!!」

この絶叫が開演を告げる本ベルとなり、波乱たっぷりの公演がスタート。

一体なにが起こっちゃったのか、これ現代の会社で言うならばですよ、

会長「おい社長! 外資系の会社と業務提携したらしいな! 勝手なことすんな!! 今回の件はお前だけじゃ頼りになんねーから、部長の水戸くんにも個別で指示出したからな!!」
社長「会長から部下に直接!? そ、そんなことしたら私の立場が!!!」

に、近い事態ですわね。

ワンマンでやってきた会社の決定に、水戸部長が入ってくる可能性が……ヘタすりゃ他の部長や課長まで……幕府という名の社長はないがしろにされ、威厳やら権力やらガタ落ち。

井伊直弼、プルプル震えます。

井伊「どんだけ……どんだけ幕府をバカにしてくれるんだ!!」

おこです。

さらに、おこ弼の怒りは膨れ上がります。

情報通「ゴニョゴニョ……ゴニョゴニョ」
井伊「なに…?今回の密勅、水戸藩と一部の公家がグルになって、裏から手を回しただと…。朝廷発信じゃなくて、水戸のヤツらが『密勅出してくれ』とお願いしたってか……水戸藩やってんなーーー!!!」

激おこです。

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そして、激おこ直弼丸のムカつきは倍率ドン!

情報通「ゴニョゴニョ……モニョモニョ」
井伊「公家と水戸藩をつなげたのは、条約に反対する志士たちだと言うのか? で、そいつらがこのオレを暗殺する計画まであると……? 
ハッハッハッハッハ……潰す!!!
密勅に関わったヤツら潰す!!
尊王攘夷派も、幕府を改革しようとする『一橋派』も全員潰す!!
焼いて、つぶして、粉にして、スプーン一杯なめてやる!!!!!」

激おこなんちゃらかんちゃらプンプンなんちゃらなんちゃらです。

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その結果、

井伊「あんたは隠居! お前は謹慎! テメーは永久に謹慎! 貴様に関しては……切腹だーーーーーーーーー!!!!!」

激情に駆られたプンプン丸さんは、処罰の嵐をおこして、全てを壊すの。

慶喜くん、堀田さん、四賢侯のみなさん(島津斉彬を除く)は、隠居や謹慎。

ジョーイおじさんや、岩ちゃんは、永久に自宅謹慎。

一橋派の橋本左内や、密勅に深く関わったとされる水戸藩の何人かは、まさかの切腹や死罪。

身分、職業問わず、処罰したその数なんと

100人以上。

そうです、これが、主演・井伊直弼による大弾圧オペラ

安政の大獄(あんせいのたいごく)

という演目です(芝居じゃなくリアルね)。

誰も望んでないのに、主演の熱だけでロングランになった幕末の大迷惑公演。

だがしかし、このダークネス歌劇にストップをかける、薩摩在住のディーバが現れるんです(女性じゃないけど)。

井伊さんのやり口に怒り心頭したトップオブ四賢侯

島津斉彬井伊直弼……ぶっ潰す!!!!!」

島津斉彬さん、その人です。

井伊の暴走を止めることを決意した斉彬さん。

だが、生半可なやり方じゃダメだ……。

そう判断した薩摩の名君は、とんでもないことを口走るんです。

斉彬「これから兵を引き連れて、京都に行くぞ! 朝廷に行って、『幕府を改革していいよ』という勅許(天皇の許可ですー)をもらう!!」
斉彬の家臣「幕府を改革!?」
斉彬「その勅許で、井伊のバカタレとアホ幕府に、『やり方変えろ!』と迫る! 軍隊もチラつかせて脅す!!」
斉彬の家臣「脅す!!?それってつまり……」
斉彬「そうです、クーデターです!!!!」
斉彬の家臣「でたーーーーーー!!!!」
斉彬「西郷!!」
西郷隆盛「朝廷に行って、勅許をもらう下準備をしてきます!!」
斉彬「心読めるのか!? だいすきだ!!!」  

斉彬さんは、兵力とブランド力のWパンチで、幕府を改革しようとする、

率兵上京計画(そっぺいじょうきょうけいかく)

ってやつを立てるんです(兵を率いて京都行くってことね。昔は京都に行くことが"上京"だよ)。

許可もなしに、軍隊連れて京都に行くなんて、平和な江戸時代にはありえねー行動ですが、もうこれしかない。

斉彬さんはソッコーで大軍勢召集。

準備が着々と進む中、兵の訓練を見る斉彬。

そして、フニャリともらします。

斉彬「ふぅー、なんだか熱っぽいなぁ……」

で、

死にます。

斉彬の家臣たち「…………えええぇぇーーーーーーーーーー!!!!!」

「えーーー!!」なんです。

斉彬さん、なんと突然の発熱から数日後……お亡くなりになるんです(急すぎて、暗殺説もあるよ)。

青天の霹靂以外の何物でもない。

もちろん、率兵上京計画も中止。

それと……ずっと、「斉彬さんは安政の大獄を止めようとした」みたいなニュアンスで語ってきましたが、実はこの人が亡くなったのは……安政の大獄が本格化する前なんです。

井伊直弼が暴走する初期段階で動いて、初期段階でいなくなっちゃったんです……。

もしかすると、斉彬さんが生きていたら、安政の大獄はなかった……かもしれません。

多くの人が悲しみに暮れる中、京都で頑張っているあの人にも……

西郷「うそだーーーーーー!!!!!!」

バカでかい鉄球が音速でぶつかったくらいの衝撃をもたらします。

心から尊敬する斉彬さんが……もうこの世にいない……。

失意のドン底にたたき落とされた西郷さんは、一言つぶやきます。

西郷「…………オワタ」

で、自殺します。

悲しみ西郷、斉彬さんの後を追うんです。

月照「待ちなさーーーーーい!!!!!」

そこにストップをかけたのが、同じ一橋派として頑張った、月照(げっしょう)というお坊さんでした。

月照「自分の後を追うことを、斉彬さんが褒めてくれると思いますか?この世であの人がやり残したことを叶えた方が、斉彬さんは喜んでくれるんじゃないでしょうか」
西郷「……ぅ……ぐ………ほむっ!!」
月照「ん?……これはなに、踏みとどまったのか?」

西郷さんは、斉彬さんの意思を受け継ぐことを決めます(こんなやりとりじゃないですが、月照さんが西郷さんの自殺を止めたらしいよ)。

そんな西郷さんの元に、

木枯らしをまといながら、

おなじみの"あいつ"が近づいてきます。

安政の大獄「どーもぉー! 安政の大獄です!! 私が始まりました!!!!」
西郷「ヤバい!!! 捕まると処罰される!! 月照さん、逃げましょう!!」
月照「この私をどこまでも連れさって!」
西郷「そういうのいらないです!!」

安政の大獄から逃れるため、西郷&月照は、薩摩に向かいます。

西郷「着いたーーー!! ギリセーフ!!」
薩摩の人「西郷さん! よくぞご無事で!」
西郷「どうも! 遅れて月照さんもくるよ!」
薩摩の人「月照!? ……西郷さん、実は……斉彬さん亡き後、薩摩藩の方針変わったんです。『幕府改革するぞ!』って感じから、『幕府の言うことに従いまーす』的な感じの保守派にガラリと…。
ですので、井伊ににらまれてる"一橋派"を、薩摩に入れることはできません。
月照は……藩の外に追放してください」
西郷「な……」
月照「(月照到着)西郷さん着いたよー! ……ん? ねぇねぇ、何かあった(ホヨ?)?」
西郷「……無邪気すぎてツラい」

ワンちゃんに「ごめんよぉ。お家で飼うことはできないんだ…」って言う時と同じ切なさです(違いますけど)。

しかも、「藩の外に追放しろ」という指示の本当の意味は、

「道中で、月照を斬り捨てろ」

ということ……。

月照さんと船に乗って、藩の外に出る西郷さんですが、頭の中はグルングルン。

命の恩人の月照さんを斬れるわけない……でも、藩の命令に背くわけにもいかない……。

大きなジレンマを抱えた西郷さんは、一言つぶやきます。

西郷「…………オワタ」

で、自殺します。

西郷、月照抱えて……
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ドボーーーーーーーーーーーン!!!!!

船の上から身を投げ、Dive to blue(心中ですね)。

すぐに救助された2人でしたが、月照さんはそのまま帰らぬ人に……。

しかし、西郷さんは、

西郷「……………ブハッ!!! キレイなお花畑見てきたーー!!」

息を吹き返し、復活を遂げたのでした。

その後、薩摩藩は、幕府の目から西郷さんを隠すため、"奄美大島"に潜伏させます(名前も『菊池源吾』ってのに変えてるよ)。

あの西郷隆盛、意外にも幕末の表舞台からドロップアウト経験あり。

ここで1回、休憩を挟むのでした。


とどまることを知らない安政の大獄

井伊のやり方に、オーラ全開でバチギレてる人がもう1人

吉田松陰「井伊と井伊まわりのやつら……っざけんなよ!!!!!」

幕末のエモい先生、吉田松陰です。

ブチギレモードの松陰さんは、長州藩にありえないお願いをします。

松蔭「井伊の元で、尊王攘夷派の同志をイジメてる間部(まなべ)っているでしょ。アイツ襲撃します」
長州藩「なにぃ!!!? 幕府の偉い人襲うって、お前それ……テ、テロじゃねーか!!!」
松陰「なので武器貸してください」
長州藩「話すすめんな!!!!」

武器貸してもらえず(当たり前です)。

さらに、「お前やっぱりバチクソにヤベーな!」ということになり、またもや野山獄(懐かしの牢獄)に入れられてしまう松陰さん。

さらにさらに、野山獄に入ってしばらくすると、松陰センセーのもとにも、

例の"あいつ"が……

安政の大獄「どーもぉー! 安政の大獄です!!吉田松陰さん! あなたにも容疑がかかってるんで、江戸の牢獄に移動してもらいます!!」

松陰、長州から江戸へ送られ、取り調べを受けることになります。

ただ、容疑の中身は、

「危ねー志士の梅田ってやつと、少し交流がある!……らしい」

「最近見つけたヤバい文書の筆跡が、松陰の字に似てる!……らしい」

という、すごく薄い内容です。

取り調べた役人も、「予想通りこいつはなんでもないな」と結論づけようとしていた、まさにその瞬間でした。

役人「なるほど……てことは、梅田とは怪しい会話してないわけね」
松陰「してません。文書も僕が書いたものじゃないし」
役人「そかそか」
松陰「僕が行おうとしていたのは間部の襲撃です」
役人「そかそか………………え?」
松陰「………………え?」
役人「え?」
松陰「は?」
役人「『は?』じゃねぇよ! おま、大犯罪じゃねーか!! し、し、島流しだー!!!」

やってまいました。

幕府が襲撃計画のことを知っていると勘違いした松蔭は、自らそのことをしゃべってしまったのです(襲撃するのは間違ったことじゃないから、あえて言ったって説もあるよー)。

しかし……

松陰の自供内容を読んだ井伊直弼は、島流しを取り消します。

幕府の要人を襲撃しようとした、その思想に激怒し、行動に危険を感じた井伊は、松陰の刑を書き換えたんです。

吉田松陰
死罪(死刑)

罪に問われるかどうかも曖昧だったはずなのに、一転して、その命を奪われる結末を迎えます。

ほどなくして、松陰は、江戸の伝馬町牢屋敷(てんまちょうろうやしき)で、首を斬られるんです。

人を想うことに真剣で、国を憂うことに本気だった若者は、30歳という若さでこの世を去ったのでした。

ここで、松陰の母・滝(たき)と、父・百合之助(ゆりのすけ)が体験した、少し不思議なエピソードを聞いてもらえるでしょうか。

松陰が江戸に送られて、しばらく経ったある日。
うたた寝をした滝は、"ある夢"を見て、その内容を百合之助に伝えたんです。

滝「松陰が元気な姿で帰ってきてくれたんです! でも……喜んで声をかけようとすると、その姿は消えてしまいました……」
百合之助「私も、ちょうど夢を見たんだ。なぜかわからないけど、自分の首を斬り落とされる夢で……ただ、それが心地よかった。首を斬られることは、こんなにも愉快なものかと思った……」

不思議な夢を同時に見るという、奇妙な体験をした2人。

それから20日以上が経ち、松陰処刑の報せを聞いた両親は、悲しみと同時に驚きを覚えます。

夢を見た日付、時刻が、息子の最期の時と全く同じだったからです。

その瞬間、滝の脳裏にある場面が浮かびました。

松陰が江戸に送られる直前、たった1日だけ実家に帰ってきたときのこと。

風呂に入る息子に、滝は語りかけるんです。

もう一度、江戸から帰ってきて、元気な顔を見せてほしい——。

松陰「もちろんです! 必ず元気な姿で帰ってきて、お母さんのその優しい顔を見にきます!」

松陰は、約束を守ったんだと思います。

最期の最期、母にもう一度会うために。

自分は首を斬られるが、何も後悔はないと父に伝えるために。

愛してやまない両親に、自分の想いを伝えるため、2人の夢に同時に現れるということをやってのけたんじゃないでしょうか。

処刑が決まった松陰は、こんな句を残しています。

「親思う 心にまさる 親心 今日のおとずれ なんと聞くらん」
(子供が親を思う気持ちより、親が子供を思う気持ちの方がはるかに大きい。
それなのに今日、子供が処刑されるという事を聞いた両親は…どんな気持ちになるだろう。)

自分が処刑される絶望より、報せを聞いた親の悲しみを想像する。

全てにおいて自分のことを二の次に考える松陰の愛情は、この国と家族に、そして

弟子たちに注がれたんです。

「狂愚(きょうぐ)まことに愛すべし、才良まことに虞(おそ)るべし」
(狂って常識がわからないバカは、"行動"を起こす愛すべき存在だ。一方、頭だけで考えて理屈を言っていると、何もことを起こさなくなるので恐ろしい。)

松陰が、弟子たちに「こうあってほしい」と送ったメッセージ。

ここで使われている"狂う"は、
『有り余るほどの情熱を持ち、常識から外れて夢中になる』
というような意味です。

彼の取った行動が、正しいか正しくないかは置いといて、自分の信念が1ミリも揺るがなかったからこそ、松陰は常に動き続けていたんではないでしょうか。

情報過多な現代、自分の範疇を超えた存在を見つけると、まずバッシングから始めるという、何か儀式のようなものが蔓延していて、行動は制約されがちです。

常識と言われるものからは外れてるかもしれないが、自分の信念に従って生きる"狂愚"を取るのか、誰からも叩かれはしないが、後には何も残らない"才良"を取るのか……なかなかズシンとくる一文。

そして、「狂愚まことに愛すべし、才良まことに虞るべし」のあとに続くのは、この言葉。

「諸君、狂いたまえ」

次回へ続きます。



【剣を取るか、ペンを取るか。そんなことより私の王子様はどっち?】

幕末エピソード4になります。

前回のおさらいからお付き合いくださいませ。

吉田松陰センセー、黒船乗り込んだ後、「松下村塾」開いたよー。
 ↓
島津斉彬さん、「集成館事業」やったよー。西郷さんも見つけてるよ。
 ↓
幕府とハリス、日米修好通商条約の条文まとめる。
 
ついに、"貿易やっちゃう条約"を結ぼうとする幕府。

もう中身出来上がるよーってタイミングで

攘夷派「ふざけんじゃないよーー!!!条約なんて結ぶんじゃねぇよ!!!!」

という、大反対の声が大量発生します。

すんなりなんていくわけなかった……。

その中でも、とってもジョーイ(攘夷)おじさん

水戸藩主・徳川斉昭(またまた登場)

は、

徳川斉昭「反対に決まってんだろがーーーー!!!!!」

ひときわ大きなシャウトを放っておりました。

斉昭がいる水戸藩は、

天皇を敬うんだ! そして、外国人は追い払うんだ!』

という

尊王攘夷(そんのうじょうい。ほら出てきた)

って考えを、日本で1番早く示した藩だったので、このおじさん人一倍うるさいんです(あの水戸黄門さんがいたのが水戸藩。その時代から始まったとされる『水戸学』っていう学問の研究の中にあったのが"尊王攘夷"っす)。

しかも、幕府にとって厄介だったのは、この"尊王攘夷"が流行ってしまったこと。

幕末の誰か「外国来たーー!! でも幕府頼りにならねーー!!」
尊王攘夷さん「幕府なんかより天皇や朝廷を推して、外国人追っ払おうぜ!!」
幕末の誰か「それだーーーーーー!!!」

幕府への不信と、尊王攘夷の考えが、ガシャーーン!! とぶつかり、大スパーク。

流行語大賞レコード大賞グラミー賞バロンドールを取るほどの大流行を巻き起こしたんです(ちょっと言い過ぎました)。

そしてこの流行、尊王攘夷の考えで活動する

志士(しし)

と呼ばれる存在を作り出したのでした(『幕末の志士』とか『維新志士』みたいなの聞いたことありません?)。
 
幕府は、こんな人たちから大反対を喰らい、条約にサインができない状況だったんです。

どうなる、日米シューツージョー日米修好通商条約。略したらヘンになった)。

岩瀬忠震(ハリスとの交渉役)「あの……さぁ……。調印(署名とか捺印ね)なんだけどさ……。ちょっと待ってもらえないかな?」
ハリス「え……なんで? あとはサインするだけじゃん? ねぇ……なんで?」
岩瀬「オレたちの関係に反対する人がたくさんいて……」
ハリス「なにそれ……意味わかんない……。岩ちゃんは私と条約結びたくないってこと!?」
岩瀬「そんなことない! オレだって結びたい!! ただ…調印は待ってもらいたい……。必ず反対してる人たちをダマらせてみせるから! だから……お願い」
ハリス「岩ちゃん………。わかった、私待ってる……」

婚姻届(条約)に、彼氏のハンコを待ちわびる、女子ハリス(おっさんすけどね)。

どうにか周りの反対を押し切って、サインをしようとする彼氏の岩ちゃん(おっさんすけどね)。
彼氏は彼女を悲しませないためにも、踏ん張ります。

だって彼女がスネちゃうと……

大砲撃ってくる可能性があるから。


と、そこへ、

悩める岩ちゃん・ハリスカップルを救うべく、

堀田正睦「岩ちゃん! ハリス! 待ってろ! 反対派黙らせる"秘策"持ってきた!!」 

老中首座の、堀田正睦さんが登場します。

彼が小脇に抱えた"秘策"ってのが

勅許(ちょっきょ)

というもの。

これ何かっていうと、

"天皇の許可"

のことなんです("勅許"は、このあとスーパーキーワードになってくるよ)。

堀田「2人とも待っといてくれよ! ……(歩き出す堀田)
朝廷が認めて、天皇の許可がくだれば、尊王攘夷の連中も納得せざるを得ない。
これですべてが丸く収まる!! 
フフフ……条約の許可をもらうなんて簡単だ。朝廷は政治に無関心なんだから、
『許可してください』『いいよ』『ありがと』これでおしまい笑。
チョチョイのポンポンポーン! よww
公家(貴族さん)たちにワイロも持ってきたし、なんてイージーモードな仕事だろwww
(朝廷に到着)あ、勅許ください」
朝廷の人「あ、ダメです」

ダメでした。

てか無理に決まってます。

公家ってのは、重度の外国人アレルギーで、

「あいつらはケダモノやさかい!」

って決めつけちゃってる連中ばかりですから。

それに加えて、志士たちが

志士「幕府なんてオワコンです! マジ、朝廷の方がアツいっすよ!」
朝廷「そ、そぉお(エヘヘ)?」

と、おだてるもんだから、幕府に対してメチャ強気の、スーパー攘夷に仕上がってたんです。

幕末でおそらく1番有名な公家、

岩倉具視(いわくらともみ)

さんなんかは、

岩倉具視「条約を認める? ないでしょww。おい、デモするぞ」

と、88人の公家を集めちゃって、条約反対の大抗議とかしゃう。

さらに、時の帝(みかど)である

孝明天皇(こうめいてんのう)

も、外国人のことが大っ……キライ。

当然のように、条約結ぶことには大反対だったんです。

堀田の部下「堀田さん。今回の失敗は勅許をもらえなかったことですけど、もう一つ大きな失敗をしてるんです。何かわかります?」
堀田「え………ワイロ?」
堀田の部下「確かに無駄金に終わりましたからね。でも違います。正解は
『朝廷に意見を求めちゃったこと』です。
今まで、政治は幕府だけでやってきた。でも『許可ください』ってお願いしたら、朝廷を政治に参加させるってことになりますよね? 
しかも、幕府より上の立場として」
堀田「……うん」
堀田部下「で、朝廷に『条約許可しない!』って言われて、幕府はそれに従うことになった」
堀田「……そう…だね(顔歪む)」
堀田部下「これって…今後、朝廷が『YES』を出さないと、どんな政策も進めることができないっていう"事実"を作ったことになりません?」
堀田「うぅ……ヒッ…ヒクッ…(泣き)」
堀田部下「泣いてください。その顔に用があります。堀田さんのせいで、またまた幕府の権力弱くなりましたよね?」
堀田「ワーーーーーーーーーーーーン!!!(爆泣き)」
堀田部下「あー泣いちゃった。いいですよ、その歪んだ顔をもっと見せてください。ほらもっと……ほら!!」
堀田「誰かこのサイコ野郎どうにかしてーーーーーーー!!!」

とまぁ(とまぁじゃないですが)、堀田さんのせいで、幕府の力がさらに弱くなったのは確かでした。

それを受け、岩ちゃん・ハリスカップル……

岩瀬「ごめん……朝廷にさ、お願いしに行ったんだけど……ダメだったんだ………どうしよう……。朝廷がまさか断ってくるとは思わなかったから! やっぱり朝廷に…」
ハリス「さっきから朝廷朝廷って、ナニよ!! 幕府が政治をやってるんじゃないの!? 朝廷って機関があるなんて聞いてない! 幕府と朝廷ってどんな関係性!? ジャパンの構造、複雑すぎるって! 言っとくけどこの感じ、かなりマイノリティだかんね!!!!」
岩瀬「…………そーなん?」
ハリス「……もういい…。岩ちゃんたち私をダマしてたんでしょ? ホントの権限持ってるのは朝廷ってとこなんだよね? アタシ、朝廷ってとこと直接お話しする」
岩瀬「それはダメだ!! そんなことしたら幕府の存在意義がなくなっちまう!オレが絶対なんとかする!! だから!あと3ヶ月待ってほしい! お願いだ! 3ヶ月たったらどんな状況であろうと条約にサインする! 約束する!!」
ハリス「………ホントに? 約束やぶったらギャン泣きしながら大砲撃つよ?」 
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メンヘラハリス(違いますけど)に、寄り添う岩ちゃん。

調印のリミットは3ヶ月後に決定。

時間、まったくありません。


そして、幕府のトラブル、これだけじゃなかった……。

条約だけでもハイパートラブルなのに、も1つメガトントラブルを抱えてるからややこしい。

それっていうのは、

跡継ぎ問題――。

このときの将軍・徳川家定(13代だよ)は、体が弱くて、優秀とは真逆の人(って言われてます)。

平和な世の中なら、周りが支えてりゃなんとかなる。

でも今は、日本が大ピンチ。

みんな共通の思いは、

「この将軍じゃダメだ!! マジで!!!」

さらに、家定には子供がいません。

ならば「優秀な将軍候補を決めとかないと!」ということになったんですね。

そこで、白羽の矢が立ったのが

一橋慶喜(ひとつばしよしのぶ)

という、「若くて、賢くて、才能あるらしい!」ってウワサされる若者。

阿部正弘(元・老中首座のね)
島津斉彬松平春嶽山内容堂伊達宗城(四賢侯だね)
徳川斉昭(とってもジョーイおじさん)

という面々が、慶喜くんを推しメンにします。

ちなみに慶喜くんは、ジョーイおじさん・徳川斉昭の実の息子。

名字が違うのは、『一橋家』ってとこに養子に出されてたからなんです(やっと出てきた『御三卿』)。

いろんなおじさんが、うりゃおいジャージャーと慶喜くんを推していますから、14代将軍は、彼で決まりま……

「ちょっと待ったーーーー!!」

入るわけですよ。ちょっと待ったコールが。

ストップをかけた代表者、それが

彦根藩藩主・井伊直弼(いいなおすけ)

です(有名すよね?)。

井伊直弼慶喜くんはダメだ! もともと水戸家の人間だろ? かつて水戸から将軍を出したことはない、前例がないんだよ! それに将軍というのは、血統優先! 13代将軍家定さまと慶喜くんは、初代家康さままでさかのぼらないと、血がつながらないだろ? これはもはや赤の他人だよ! そこで、私がオススメしたいのは……」

紀州藩藩主・徳川慶福(よしとみ)

井伊「慶福ちゃんは、13代将軍家定さんの従兄弟にあたる。血統申し分なし! それに、紀州藩からは将軍を出した前例もある! だから慶福ちゃんにケッテー!!」

慶喜くんを否定し、慶福ちゃんをゴリ推しする井伊さん。

他にも、たくさんの譜代大名と、あの大奥が、慶福ちゃんを猛プッシュします。

大奥の口悪い人「慶喜くんはダメ! 何がダメって、ジョーイおじさん・斉昭の息子ってとこ!」
大奥の辛い人「それな! 斉昭、マジ最悪だかんね!」
口悪い人「自分が節約家だか知んねーけど、『大奥が金使いすぎ』って文句言ってくんの意味わかんねーし! テメーとは身につけるもんがチゲーんだよ! うすらハゲが!」
辛い人「こちとら着飾ってナンボなんだよ!」
口悪い人「で、あの斉昭とかいう枯れヘビジジイさぁ、女グセ悪いって知ってる?」
辛い人「え?……バリキモいんだけど。今毛穴レベルで拒否ってるから」
口悪い人「とにかくジョーイジジイ無理だから、自動的に慶喜くん無理。もし慶喜くん将軍になったら、私、裏返って果肉絞って果汁だす」
辛い人「なにそれ」
口悪い人「wwwwwwwww」
辛い人「wwwwwwwww」

会話はさておき、斉昭が大奥に嫌われてたのはホントらしく、逆に慶福ちゃんは「かわいいー!」と、人気があったみたいです。

いつの世もイケメン万歳。

ただ、慶喜オタも、慶福ちゃんには大反対。

そこには決定的な理由が……。

慶喜オタ「いや………まだガキじゃねーか!!!」

そう、慶福ちゃんまだ子供だったんです(この問題が騒がれはじめたときで、8歳。一番白熱してるときでさえ、13歳)。

慶喜オタ「この大変な時期に、なんでわざわざ子供だ!!!」

こちらもなかなか真っ当な理由。

能力か血筋か。

双方の目から、火花やらレイザービームが飛び交う億千万の胸騒ぎ。

慶喜くんを推すのは、「幕府を改革してやる!」って人たちで、その名も『一橋派』

慶福ちゃんを推すのは、「これまで通りの幕府がいい!」って人たちで、題して南紀派』

ここに、一橋派VS南紀

将軍継嗣問題(しょうぐんけいしもんだい)

がボッ発したのでした。

"条約結ぶ結ばない"というドタバタに、
"将軍の跡継ぎ問題"というゴタゴタが
ミックスされ、
日本は怒りのドンちゃん騒ぎ。

さらに、同じ一橋派の中でも、攘夷派と開国派に分かれてたりして、
「ネックレスのチェーンって、絡まったらこんなにほどけないの?」
と、ほぼ一緒のややこしさです(例:徳川斉昭は攘夷派。島津斉彬は開国派。でも二人は同じ一橋派)。

もーーーーグッ…チャグチャ。
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とにかく、推しメンを将軍にしようと躍起になる、一橋派、南紀派、それぞれの策略が、ヨーーイ……

ドン!!!!!

まず最初に動きを見せたのは、一橋派の島津斉彬さん。

斉彬さんの養女で、将軍家定さまと結婚が決まっていた、

篤姫(2008年NHK大河ドラマ篤姫」の主人公だよ)

に、

島津斉彬篤姫ちゃん! 次の将軍を慶喜くんにするよう、家定さまと大奥を説得して!」
篤姫「いたいけな乙女が、将軍に嫁ぐだけでも、とんでもねープレッシャーなのに、その上政治的な任務をこなせと? はい、頑張らせていただきます」
斉彬「今のイヤミー?」

将軍家定&大奥を、口説き落とせと頼みます。

さらに、朝廷にも仕掛ける斉彬さん。

斉彬「西郷ー! 朝廷に行ってきてほしいんだ!」
西郷隆盛「『次の将軍は慶喜くんにしろ!』という、天皇の命令が書かれた文書、"勅書(ちょくしょ)"を出してもらうためですね?」
斉彬「すぐ理解してくれるー! すきー!」

西郷さん、勅書をもらうため、あちらこちらを駆けずり回ります。

同じように、松平春嶽さんも、

松平春嶽「橋本ー!」
橋本左内「勅書をいただくため、朝廷に向かいます」
春嶽「まだなんにも言ってないのにー! すきー!」

優秀な家臣

橋本左内(はしもとさない)

を、朝廷に走らせたのでした。

まさに、大ピンチを迎えた"幕府"というセリヌンティウスのために、江戸の世を駆け抜ける幕末のWメロスであります(そんな異名ないです)。

多忙スケジュールを極めた2人の努力。

斉彬さんの「篤姫ちゃん大奥大作戦」。

その結果は………

ダメー。

全部ダメー。ホントにダメー。

なんと、どれもこれもギリギリのところでうまくいきません。

そればかりか……

阿部正弘「あーあ……もっと改革…したかっ……たな……(パタッ)」
老中「阿部さーーーーーーん!!!!」

改革王・阿部正弘さん、死去。

一橋派にとって、"幕府の中心にいる"阿部さんがいなくなるってのはとんでもないダメージ。

頼りにしていた存在を失い、確実に劣勢ムード漂う一橋派……。

そんな敵の状況をあざ笑うかのように、南紀派はミラクルカードを取り出します。

それは

大老(たいろう)

という名の切り札。

幕府マニア「た、大老だと!? 幕府の中の最高職じゃないか!! 臨時に置かれるポストで、そのランキングは老中首座よりも上……。大老の決定権は、アメリカの大統領級に強い!南紀派の誰かが大老になれば、この勝負一気に片がつく!!」

この切り札を利用すべく、南紀派は将軍家定に囁きます。

大奥「家定さま。このご時世、大老ほしくありません?」
南紀派の人「適任者といえば、井伊…? いいな…? いいな…?」
家定「にんげんていいな」
南紀派の人「ううん、違う違う。いいなお…? いいなおす…?」
家定「あ、井伊直弼大老ね」

大老井伊直弼

誕生。

絶対的な権力を、井伊直弼が手に入れるんです。

さらに、井伊さん&南紀派は、その勢いのままたたみかけます。

井伊「一橋派のヤツらって、家定さまのことを『できねーヤツ』って決めつけてません?」
家定「うん、一橋好かん」
井伊「ですよねー! だから次の将軍は、よしと…?よしと…?」
家定「よしとくれよ、あんた」
井伊「なにそれ? 違う違う。次の将軍は慶福ちゃんですよね!!?」
家定「うん、次の将軍、慶福ちゃん」
井伊「いただきました! 発表します! 次の将軍は、慶福ちゃんに……ケッテーーーーーーー!!!」

斉彬「え?」

春嶽「は?」


一橋派「ええぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!!?」

決まったーーーー! 

ほぼ井伊さんが言わせたーーーー!

"大老"というスペシャルカードを手に入れた南紀派、怒涛の勢いで、将軍跡継ぎ対決を制したのでした(家定さん、南紀派にいろいろ吹き込まれたとか、自分の意思で決めたとか、諸説ありだよ)。


さ、残すは条約問題。

こいつをどうにかしなけりゃ、幕府の全員、一睡もできません(寝たでしょうが)。

大老・井伊さん、今度はこちらの解決に。

井伊「やはり勅許は必要だ。しかし、まだその勅許がおりない…」
岩瀬「もう限界です。ハニーが泣いてます」
井伊「ハニー? よくわかんねーけど、ちょっとだけ期限伸ばしてもらって……」
岩瀬「何回も伸ばしてもらったわ!」
井伊「!」
岩瀬「限界だっつってんだろ! いいか! 今からハリスんとこ行くけど、どうしようもねー場合は調印してくるからな!!」
井伊「……もうわかった! しょうがねー場合はしょうがねー!!でも伸ばす方向で頑張れよ!」
岩瀬「これ以上ハニーを悲しませたくないんだ!!」
井伊「相手おっさんだろ!!」

井伊さんから承諾を得て、ハリスの元に駆け寄る岩ちゃん。

潮風で髪を揺らしながら、船上で岩ちゃんを待つハリス。

岩瀬「ハリス!!!!!!」
ハリス「(振り向いて)岩ちゃん!! サインは!?」
岩瀬「(微笑みながら、ゆっくり頷く岩ちゃん)」
ハリス「(ひとりでに溢れ出す涙)岩ちゃん……ありがとう!!」

結ばれました(2人がじゃないよ。条約がだよ)。

勅許をどうもらうかあれだけ騒いでたのに……

結果なんと、勅許ナシで結ばれちった。


日米修好通商条約、ようやく調印です。

こうして、条約問題と、将軍跡継ぎ問題は、一応のゴールを迎えることになったのでした。

しかし、一件落着かというと……

もう、まったくそんなことはありません。

井伊さん的には仕方がなかった勅許ナシ。

ですが、尊王攘夷を掲げる人の目には、すべてを無視した極悪人に映ったことでしょう。

増大する憎しみの炎……。

その炎を吹き飛ばすため、井伊直弼は"粛清"という剛腕を繰り出すのでした。



【エモい先生とアドバンス大名】

幕末エピソード3となります。

本編に入る前に一つ注意点が。

幕末には、本名の他に"通称"や"雅号(がごう。風流な別名)"など、複数の名前を持つ人が、いっぱい出てきます("松陰"や"海舟"も雅号です)。

ですが、話の流れを理解してもらうことを最優先に考えて、ここではその人物の表記を、"一番有名であろう名前"で統一させていただきます(例外もありますが)。

すごく簡単に言うと、その都度「この人はこのとき、こう名乗ってました」って書くのがめんどくさいんです。ごめーんね。

しのごの言いましたが、前回のおさらいをやらせていただきますね。

ペリー、お手紙の答えもらいにもう一回日本にくる。
 ↓
で、日米和親条約結ぶ。
 ↓
外国来るのに備えて、阿部さん"安政の改革"で頑張る。
 ↓
でも、いろんな外国と"和親"結ぶことに。
 ↓
アメリカから今度はハリスさん登場。
 ↓
ハリスさん、将軍と会って、幕メンにロングスピーチ。

 

今回は、ペリーがやってきた前後、西日本に現れた"2人の賢者"の話から始めていきたいと思います。

1人目は、幕末、明治に活躍する人材を何人も育てた、長州(山口県だよ)の賢者、

その名も

吉田松陰(よしだしょういん)

教育者のイメージが強い吉田松陰

一体どんな人か、まずは前菜を召し上がってください。

あるとき、2人の友人と東北に行くことを計画した松陰。

当時、旅をするには自分とこの藩の許しが必要なんですが、出発日が近付いても長州藩からの許可がなかなか下りません。

友人の1人は、兄の仇討ちのために旅立つというのに……。

でも、勝手に旅立ったら、"脱藩(だっぱん)"っていって、藩を抜けるとみなされ、スーパー重い罪になっちゃう。

だからこの選択肢はなしです。

さて、ここでクエスチョン。

このとき松陰が取った行動とは?

A.友人に言って、出発日をずらしてもらう。
B.自分は旅に行くのをやめる。

…………では、正解の発表です。

吉田松陰「脱藩してきた」

C.でした。

宮部鼎蔵(みやべていぞう。松陰のお友達)「脱藩!!!?」
江幡くん(えばた。2人のお友達)「マジでか!?」
松陰「東北行くのはこの日って決めたろ。江幡くんが仇討ちするためなんだからズラせないよ! なぁ!」
江幡くん「お、おぅ……(ちょっとひいてる)」

友との約束を優先させるためには、犯罪者にもなる男。

国のルールより、自分の信念。

プライスレス(余談ですが、江幡くん、このあと仇討ちやってません)。

前菜が、かなり脂っこくなってしまいましたが、情熱をアクティブでくるんで脱藩のソースをかけたお味はいかがだったでしょうか?

それでは、ここからメインディッシュの連続をぶち込んでいきます。

黒船が日本に来てからの松陰さん、佐久間象山(さくましょうざん)ていう師匠の教えもあって、ずっとこんなことを考えていました。

松陰「日本が力をつけて攘夷をするためには、まず外国をこの目で見ないと……。よし、黒船に乗って海外へ渡ろう!」

立派な密航です。

このときの法律は、日本人が勝手に海外へ行くと大いに死刑。超がつく大犯罪。

にも関わらず……

松陰「ロシアの船きてるー! 乗るぞーー!!」

乗ろうとします。ガチなんだもの。

ただ、ロシア船はすでに出航しちゃってたから失敗。

なんとか死刑にならずに済んだのでした。

と思いきや……

松陰「ペリーと黒船が帰ってきたー! 今神奈川いるぞーー!!」

乗ろうとします。ぜーんぜんあきらめない。

しかし、ここでも失敗。

またもや犯罪者にならずに済んだのでした。

松陰「黒船、下田に移動したぞー!!」

うん、乗ろうとします。多分乗るまでやめない。

なんと黒船を下田まで追いかけ、結果、

松陰「乗れたーーー!!!」

乗ったんです。

ペリー側の人「………で、何しに来られたんですか?」
松陰「僕と金子くん(松陰さんの弟子)をアメリカに連れてってください! 世界を知りたいんです! なぁ金子くん!」
金子くん「はい!」
ペリー側の人「……連れて行ってあげたい気持ちはあるんですが、せっかく結べた条約がこじれる可能性あるんで、あなたたちを連れて行くことはできません」
松陰「で、できない? な……そこをなんとか! なぁ金子くん!」
金子くん「はい!」
ペリー側の人「ごめんなさい。無理なん…」
松陰「乗ってきた小舟も流された!そうだよな、金子くん!」
金子くん「はい!」
松陰「小舟の身元を調べられたら、僕たちが渡米しようとしていたことがバレてしまう! バレるな、金子くん!
金子くん「はい!」
松陰「そうなれば首を斬られてしまう! 斬られちゃうな、金子くん!」
金子くん「はい!」
松陰「だから、連れて行ってもらう以外、道はない!!」
金子くん「はい!!」
松陰「呼んでないぞ金子くん!!」
金子くん「はい!!」
ペリー側の人「…………………不憫ですがムリです」
松陰「金子くーーーーーん!!」
金子くん「はーーーーーい!!」

陸に送り届けられ、覚悟の上で下田奉行所に自首する2人。

しかし、逆転ラッキーが起こります。

幕府のエラい人に、松陰さんの言い分が聞き届けられ、なんと死刑は免れたのでした(ペリーさんたちは、松陰さんのその後を心配していたみたいです。それに、『日本の法律では、大罪かもしれないけど、自分たちから見れば、むちゃくちゃ褒めるべき好奇心の表れだ。知識欲や探究心を持っている日本という国の将来は、可能性を秘めていて、有望だ!』的なことも言ってます。ほめられたー)。


それでも罪は罪。

密航先生ロック吉田(松陰)は、長州へ帰され、野山獄(牢獄だね)ってとこへ入れられてしまいます。

やはり、囚人生活は、彼の体と精神をボロボロにむしばん……

松陰センセー「やったー!! 大好きな読書や執筆がたくさんできるー!」

ちょっとはしゃいでました。

プリズンライフを、エンジョイの方向に持っていき、さらに、

松陰センセー「本おもしろーい! 誰かとしゃべりたーい!」

と、なり……

読書で吸収した知識や自分の考えを、他の囚人にしゃべり始める。
 ↓
最初は「なんだコイツ……キモっ」と思っていた囚人たちも、だんだん「おもしろいかも……」という反応に変わる。
 ↓
囚人たち、松陰センセーのお話の虜に。まさかの、見張りの役人までもが、松陰センセーの生徒になる。
 ↓
しばらくすると、今度は逆に「え! あなたは詩の才能があるんですね……僕に教えてください!」とか、「あなたは字がキレイですね……教えて!」と、松陰センセーの方から、他の囚人に弟子入りしちゃう。
 ↓
みんなが、生徒でもあり先生でもある状態になっちゃう。その結果……
 ↓
牢獄が学校に変わっちゃった。

松陰センセー、学ぶ楽しさと教える喜びを、同時に体験できるという、誰もみたことのないニュースクールを作っちゃったのでした。

これは、長州の明倫館(めいりんかん)という学校で先生をしていた経歴もデカかったんじゃないでしょうか。

ただ、松陰さん、どこまでいってもフツーじゃないというか……。

先生に就任した年齢が……

9歳です。
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今でいう、小学3、4年生で、もう教える側……。

想像してみてください。

子供を教えてる、子供の姿。

"大人が絶滅した世界"という設定の、アニメや小説みたいな世界観です。

さらに、11歳のときには、藩主(殿だよ)の前で講義を行ってます。

現代なら『私の町のスーパーキッズ』って感じで、確実にTVに出てます。

そんな天才少年が成長し、囚人たちに、学ぶ楽しさを伝え、生きる喜びを与える……。映画だったら、

「奇跡が降り注ぐ場所 ――松陰先生と過ごした365日――」

なんてタイトルで上映されそうな出来事でした(チープに仕上がってしまいました)。

やがて、野山獄を出ることになった松陰センセーは、叔父さんがやっていた塾を受け継ぐことに。

その塾の名前こそ、

松下村塾(しょうかそんじゅく)。

幕末、明治の超有名人たちを輩出した、あのミラクルスクールです。

幕末のひな壇「なんでそんなに優秀な人たちが育ったんですか?」
池上さん(みたいな人)「いい質問ですね。まず、松下村塾では入塾希望者の身分や年齢は問いませんでした。さらに、塾には何時に来てもいいし、何を学んでもいい。生徒が塾を訪れた瞬間が授業のスタートだったんです」
ひな壇「いろいろ自由なんですねー! で、どんな授業を?」
池上さん「いい質問ですね。松陰さんは講義の他にも、生徒に本の一部分を読んで来てもらい、それについての意見を発表してもらったんです。そこから、みんなでディベートへ発展するという授業もやっていたんですね。これは、現代で『受ける授業じゃなくて、自分から進んで学んだ方がいいんじゃねーか?』って取り入れられてる、アクティブ・ラーニングとおんなじやり方です」
ひな壇「スゲー!! で、生徒とどう接っして……」
池上さん「いい質問ですね。松陰さんは……」

1回引き取ります。

そんな松下村塾からは、

久坂玄瑞(くさかげんずい。このあとちょー登場)
高杉晋作(たかすぎしんさく。メチャ有名)
伊藤博文(いとうひろぶみ。初代内閣総理大臣だね)
山縣有朋(やまがたありとも。『日本陸軍の父』だって)

に代表される、たくさんの優秀な若者が登場し、幕末の世を舞台に大活躍します。

「偉人がこの中から出る!」と宣言し、すべての生徒の長所を必ず見つけた松陰。

入塾を希望する者が「教えてください」と言うと、「教えることはできないが、私もあなたと一緒に学んでいきたい」と答えた、彼の姿勢や愛情こそが、この塾最大のテキストだったんではないでしょうか(気の利いたこと言えたと思ってます)。

 

続いて、長州からさらに離れた"薩摩(鹿児島あたりだよ)の賢者のご紹介。

薩摩の藩主さんは

島津斉彬(しまづなりあきら)

という人です。

幕末の時代、「勢いあるね!」「経済力も政治力もあるね!」って感じの藩を

雄藩(ゆうはん)

と呼んでいました。

そんな雄藩の中でも、特にまわりから一目置かれる大名が、4人いたんです。

ドドーーーン! 薩摩藩 島津斉彬
ドドーーーン! 福井藩 松平春嶽(まつだいらしゅんがく)
ドドーーーン! 土佐藩 山内容堂(やまうちようどう)
ドドーーーン! 宇和島藩 伊達宗城(だてむねなり)

この4人を

幕末の四賢侯(しけんこう)

と言います(ワンピースの四皇みたい。かっけー)。

斉彬さんは、この4人の中でも断トツにすごかったんじゃないかといわれる人物。

同じ四賢侯の春嶽さんも、「大名の中でトップだよ。自分も含め、他の誰も敵わないよ。うん」と、のちに語っているくらいなんです。

じゃ具体的に、斉彬さんの一体何がスゲーのか?

島津斉彬「やっぱ海外の技術とか大砲とか、ほしーよなぁ」
家臣「ま、そーっすねー。仕入れたいっすけどねー。ムズいっすよねー」
斉彬「てか、自分たちで作ればよくね?」
家臣「そりゃ作りたいすけど、工場的なものがないと無理ですよー。日本にそんなとこねーし」
斉彬「だから、工場から作ればいいんじゃん」
家臣「………え、そういうこと!!!?」

工場、作っちゃいます。
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なんと"海外式の工場群"を、薩摩の中に作っちゃったんです。

言ってしまえば、日本初のコンビナート

溶鉱炉(ようこうろ)や反射炉(はんしゃろ)っていう、鉄を造る設備を造って、それで大砲造っちゃう。

軍事品や産業品なんかもこの工場で作り、ついには……日本初の蒸気船もこしらえてしまうんです。

国を豊かにしたいなら「元から作っちゃえ!」というこの発想、

規格外です。

もう、島津テクノロジー斉彬という、ミドルネームが入ってもおかしくありません(おかしいです)。

この"斉彬スーパープロジェクト"のことを、

集成館事業(しゅうせいかんじぎょう)

と言いました(ちなみに、「旧集成館」って名前の建物は現在も残ってて、国の重要文化財として指定されてるよ。で、なんと世界遺産にも登録されとります。スゲー)。

さらに、斉彬さん、人の才能を見抜く力もスゴかった。

幕末ヒーローの中でも、知名度抜群の"あの人"のことを見つけてるんです。

身分の低かった"その人"の能力を見出し、熱心に教育し、斉彬さんの手足となってすこぶる働いた人物。

薩摩が生んだ幕末のちょー有名人と言えば……

もうお分かりですね。そう、

西郷隆盛

さんです。

斉彬さんを尊敬し、彼からいろんなものを吸収した西郷さんの活躍は……coming soonです。

 

薩摩や長州で、優秀な人材が育ち始めた話はいったん置いといて、ここからは

『ハリス・バックフーとアズカバンの貿易』

の続きを。

スーパースピーチで十分な手応えを感じたハリスさん。

そのまま江戸に残り、返事を待ってたんです。

すると、幕メンから……

まさかの音沙汰ゼロ。

ん?

スピーチ刺さったんじゃないのか?

ナンダコレハ? 

一体今、何の時間なんだ……?

しびれを切らせたハリスさんは尋ねます。

ハリス「あのー……例の件どうなってます……?」
幕メン「例の件?」
ハリス「私のスーパー大演説」
幕メン「あーあれね! あれ、響きましたよー! 今ね、いろんな人に意見を聞いて返信待ちなんです。少々お待ちください」

てな感じ。

そして何度目かの催促の日。

ハリス「あの……まだですか?」
幕メン「あ、今返信待ちで…」
ハリス「それ聞いたって(イラッ)。ではいつ返事をもらえるんですか?」
幕メン「こればっかりは……えぇ。日本は大事なことがあると、長い話し合いをしてようやく答えを出すんです。ハハッ。これは昔からある文化で、石橋を叩いて渡るというか……英語だとなんて言うんだろ? オランダ語ならちょっとわかるけど、英語だとちょっとわかんな…」
ハリス「バカタレが!!!」
幕メン「!」
ハリス「これだけ人を待たせるなんて、侮辱するにもほどがある! 丁寧なのは言葉だけで、誠実さのかけらもない! もういい、下田に帰る! どこかの国が艦隊引き連れて脅して来て、初めて後悔しろ!!!」
幕メン「ごーーめーーん! すぐなんとかするから~。ごーーーめーーーん!!」

ハリスさんの剣幕にヘタッた幕府は、すぐに交渉を開始。

幕府の優れたオジサン 
岩瀬忠震

が中心となり、時には議論、時には駆け引きを繰り返し、むーちゃくちゃ細かく話し合うこと14回……。

全部で14ヶ条のお約束が決定します。

その中でも、「お願い!これは知っといて!」ってやつがこちら!

1、日本はワシントンに外交官おいていいよ。アメリカは江戸に外交官おくね。

3、下田、函館にプラスして、神奈川、長崎、新潟、兵庫の港開いてね。江戸と大坂は市場開いてね。開いた港にはアメリカ人も住むね。お役人さんとか入れない自由な貿易しよー。

5、外国のお金と、日本のお金は、同じ種類・量なら通用することにしよー。金は金と、銀は銀と交換できるってことね。

6、日本人に犯罪やっちゃったアメリカ人は、"アメリカの法律"で裁くからね。アメリカ人に犯罪やっちゃった日本人は日本の法律で裁いてね。
("関税率"のこと書いた『貿易章程』ってのがセットでついてるよ)。

そうです、"貿易"のことをガッツリ盛り込んだこれが

日米修好通商条約(にちべいしゅうこうつうしょうじょうやく)

というやつ。

日本、禁断の貿易に、足湯レベルで突っ込みます。

しかも、この日米修好さん、のちに"不平等条約"と呼ばれるんですが、それを先に説明しておきましょう。

「日本でアメリカ人が犯罪やったら、アメリカ人が裁くだぁ!? 日本の法律で裁けないのキビーって!」

だったり、

「関税(物が国境を通り過ぎるとにかかる税だよ)を自由に決める権利がない!? 日本だけで税率決めらんないのジーザスだろ!」 

ってのが、日本がちょー不利とされてる有名な部分です。

ただ、これね、ハリスさんがムリやり押しつけたかと言うと、一概にそうとも言えず……。

ハリス「日本の法律、『10両以上盗んだら死刑!』とかなんすよね? さすがにヘビーすぎる……。私は仲間を守りたい!! アメリカの法律で裁くことを許してもらいた…」
岩瀬忠震「いいすよ」
ハリス「いいすよ!!?」
岩瀬「はい。日本は昔から外国のことは外国に任せる感じなんで。あと、なるべくそちらと関わらないようにしたいので、むしろそうしてください」
ハリス「……素直に喜べねーな……」

とか、

ハリス「貿易をするとなると、関税を決めないとですね!」
岩瀬「でた! 聞いたことあるけど、よく知らねーやつ! 欧米とのカラミなさすぎて! 教えてほしーっす!!」
ハリス「りょーかいです。ではレクチャーしましょう。まず輸入税というのは……」

といった感じでした。

外国と関わりたくない気持ちと、関税の知識の薄さが生んだ、不平等だったんですね(それでも、ハリスは、岩瀬さんと、井上さんていうもう一人の交渉人のことを、『2人は議論で私を悩ませることがあった。彼らが交渉人だった日本は幸福だ』と、ちょー褒めてます。彼ら、国際的な知識が乏しいのに、ロジックが合ってるか合ってないかだけで、ハリスに対抗したことになります。すごすぎる!)。

何はともあれ、条約の内容は整いました。あとは名前書いて、ハンコおせば("調印"ってやつね)、条約ケッテー! になるんですが……またまた大きな問題が。

この条約に大反対の声が上がって、恐ろしくモメちゃうんです。

それだけじゃありません。このタイミングで、もう1つ大きな問題が発生して、収拾のつかないトラブルに……。

予告します! 一応の収拾はつきます!

 

【映画ヒットして聖地巡礼してんのかってくらい来る】


幕末エピソード2です。

それでは前回の軽いおさらいを。

ペリーちゃん、黒船で日本にやって来る。
 ↓
幕府大あわて。
 ↓
とりあえず、アメリカからのお手紙受け取る。
 ↓
ペリーちゃん「来年またくるよ」宣言。
 ↓
みんなから意見聞いて、幕府の力、パワーダウン。

浦賀に突如現れた黒船。

さんざん振り回された徳川ジャパンは、「また来るよ」と言ったペリーさんに頭を抱えます。

幕府の人「いったんペリー帰ったけど、これからどうすりゃいいんだよ……」
幕府の人「あのー…。眉毛が八の字中、申し訳ありません。今度はロシアが来てますが……」
幕府の人「え!? もーーー、オレなんか悪いことしたーーー!!?」

追い討ちをかけるように、今度はロシアのプチャーチンって人がやって来て、幕府、大いにグズります。

プチャーチン「仲良くしよっか? ねぇー開国しようよ~!」
幕府の人「ロシアもアメリカと同じようなこと言ってきた! これ…どうすんのよ!?」

おもくそテンパる幕府ですが、それに負けじとテンパった人物が

ペリー「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい! ロシアが日本に行ったーー!!!!」

香港にいたペリーさんでした。

ペリー「最初に開国させてこそ、有利になることがいっぱいあるんだ!! 他の国に先を越されちゃまずすぎる……日本行くぞ!!!」
ペリー部下「えー! 真冬の海渡るのキツーい! ヤダー!」
ペリー「文句言うな! ほれ、タータターンターンターンターン!♫」
ペリー部下「………タータターンターン……」

全員でアメリカ国歌を歌いながら(歌ってないと思います)、予定前倒しで、再び日本にやってきます。

予告通り船増えて、7隻で日本到着(あとで追加されて9隻)。

日本側「……春って言ってましたよね?」
ペリー「どんなことにもチャレンジする。それがオレたち……U・S・A!」
アメリカ側「U・S・A! U・S・A! U・S・A! U・S……」
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日本側「………こっちは、将軍様(12代家慶)が亡くなられて1年経ってないんです。バタバタしてるこの時期に来られても……。それに、ここ江戸湾(今の東京湾)すよ。前回浦賀の今回江戸湾…。さすがに江戸に近づきすぎです」
ペリー「新たな道を切り開いて行く。それがオレたち……U・S・A!」
アメリカ側「U・S・A! U・S・A! U・S・A! ご一緒に…U・S・…」
日本側「やりません。そのノリ知らないです。 あの、浦賀か鎌倉に移動してもらえませんか」
ペリー「ムリです」
日本側「なんで」
ペリー「江戸行くから」
日本側「ムリです」
ペリー「なんで」
日本側「ムリだから」
ペリー「でも行く」
日本側「浦賀鎌倉」
ペリー「ムリです」
日本側「じゃ横浜」
ペリー「あーね」

移動しました。

話し合いの場所は横浜村(横浜市だよ)に決定します。

で、移動して早速、

幕府「さぁさ! お茶でも飲んでゆっく…」
ペリー「お手紙の返答ください」
幕府「……………ですよね」

もう絶対、何らかの答えを出さなきゃダメ。

もうちょい待ってなんて言えない状況。

こうなると大事なのは、"譲れない"部分をはっきりしておくことです。

交渉にあたった、林大学頭(はやしだいがくのかみ)さん

ゆずれない願いを抱きしめます。

林大学頭「石炭や食料を提供するとか、難破したら保護するとかはオッケーです」
ペリー「マジで!? いいねー!!」
林「ただし……"貿易"は無理です!!」
ペリー「はにゃ?」
林「鎖国は昔からの日本の法律! 欧米との貿易はその決まりを破ることになる! だから、貿易だけはできない!!!」
ペリー「うん、別にいいよー」

"譲れない"願い、抱きしめてもらえました。

貿易やったら、今まで築き上げた幕府のルールが崩れ、さらには、欧米に侵略される危険性も出てくる……林さん、そこだけは突っぱねたんです。

でも、ペリーさんは貿易以外の要求が通ったことに大満足で、それにオッケーサイン。

お互いの主張をそれぞれが受け入れ、これからの話し合い…に……さらなる……

……………

もう着地点見つかってね?

日本、アメリカと関わることをオッケーしたし、アメリカもそれに満足してる……

だとすると、

200年以上続いていた"制限された交流"……

おわりだお。

ペリー&林「条約……結ぶぞーーー!!!!!」

ということで、

日米和親条約(にちべいわしんじょうやく)

って名前の条約が結ばれましたとさ(『神奈川条約』って言ったりもするよ)。

主な内容はこんな感じ(全部で12ヶ条ね)。

1、アメリカと日本は、永久に仲良しね。 

2、下田港静岡県)と箱館港(北海道)開いてね。ここでは薪、食料、石炭がもらえることにしまーす。

3、アメリカの船が難破したら、乗ってる人保護してね。

9、今後もし、日本が他の国ともっといい条件で条約結ぶとするよね。そしたらその条件は自動的にアメリカにもあてはまることにしてー("最恵国待遇(さいけいこくたいぐう)"っていうよ)。

11、下田に、外交官の人おかせてね。

このあと、場所を下田に移して話し合いが続き、細かい条約が決定します(『下田条約』ってんだ)。
 
海外への窓を少しだけ開けた日本。

これから続く、異国との新鮮すぎる交流は、あっと驚く大ハプニングを箱買いしてくるのでした(間違えがちだけど、この時点じゃ"完全に開国"してないよ。貿易オッケーしてないんで)。

さて、ペリーさん再来日からの条約で、「これまで以上に外国に備えるぞ」と、決心を固めたのが

阿部正弘「もっと改革だーーーーー!!!」

改革マニア、阿部正弘です(マニアとかじゃないですが)。

権力弱くなろうが関係なし。

阿部さんは幕府の中心で改革を叫びます。

老中「阿・部・さん!! 諸藩に、大きな船造ること許可したんすよね!? 藩が勝手にデケー船造るのは禁止されてます! いろんな藩が船造って、幕府に歯向かってきたらどうするんすか!?」
阿部「どうするかな」
老中「今はその危険性を考えるより、外国の脅威に備える方が先だってことですか!?」
阿部「にんともかんとも」
老中「『にんともかんとも』ってなんだよ!! 会話してくれよ!!」

さらに、人材を育てるため、

阿部「あのねー、戦闘の訓練所と、海軍の学校と、海外の学問勉強するとこ…欲しい!!」

いろんな施設を作り上げるんです(それぞれ、講武所(こうぶしょ)、長崎海軍伝習所(ながさきかいぐんでんしゅうじょ)、蕃書調所(ばんしょしらべしょ)って名前。蕃書調所は東京大学の元になった1つっす)。

阿部さんは、色とりどりの改革を成し遂げ、

安静の改革

と呼ばれる趣味を極めたのでした(決して趣味じゃないです。
実際の阿部さんも、会話の中で自分の意見をあまり言わなかったらしいです。失言して、相手につつかれたら困るからですって。なんか現代の政治家と似てるー)

外国来ることに備えてたら……来るんですね、条約の噂を聞きつけたみなさんが。

イギリス「聞いたよぉ。アメリカと条約結んだんだってぇ?」
日本「な、なんですかあなたは! 急に来て……!」
イギリス「ずるいなぁ、アメリカとだけ楽しいことして……オレとも条約結んでくれよぉ」
日本「な、なにを言ってるんですか……そんなことできるわけな…」
イギリス「いいじゃねーかよ!」
日本「きゃっ!」

日英和親条約締結。

ロシア「オレもだ!」
日本「きゃっ!」

日露和親条約締結。

オランダ「こっちもだよ!」
日本「きゃっ!」

日蘭和親条約締結。

結んだというか、結ばされたというか、こんなに連続で結ぶ? ってくらい結んじゃう幕府。

結んで(条約)、開いて(開国)、手をうって(合意して)、結んで(条約)。
また開いて(開国)、手をうって(合意して)、その手を上に(お手上げ状態)……。
(房野オリジナル『むすんでひらいて 幕末ver.』でした)

結んで開き疲れた幕府……ですが、欧米のみなさんはまったく休憩をくれません。

開国ダ・カーポをかまして、またもや、Aメロアメリカの登場。

条約の中にあった『11、下田に、外交官の人おかせてね』の約束通り、初代駐日領事(はじめて日本に住む外交官)、

タウンゼント・ハリス

が、どんぶらこやってきたんです。

ハリス「おじゃましまーす」
日本側「ちょちょちょちょちょちょちょ」
ハリス「なになになになになになになに」
日本側「あの……聞いてないです」
ハリス「え? 条約にあったでしょ」
日本側「あったけど、『両国(日本とアメリカ)政府が話しあってオッケーなら』って、なってましたよ。まだ何にも話し合ってないですよね?」
ハリス「違いますよ、『両国政府の"どちらか"が、オッケーなら』ですよ。で、アメリカがオッケーなんで、上がらせてもらいますね。では失礼し……」
日本側「待って待って待って待って待って」
ハリス「なんだ君は!?」
日本側「なんだ君はってか。いやだから、条約に『お互い話し合って』って……」
ハリス「ハー……まぁ多分ですけど、通訳するときに行き違いがあったんでしょうね。でも、知ったこっちゃありません。どっちの言い分が正しいか、それはまた、アメリカと日本の政府の話し合いで決めてもらうことです。私の知ったこっちゃありません。ですので……上がりまーーーーーーーーす(キーーーーーン)!!!!!」
日本側「あーーーーーー!!!!」

結局、ハリスさん上陸。
で、ソッコー

ハリス「江戸に行って、将軍に会いたいです」 
幕府「将軍に!!!!!!?」

幕府のみなさんの心臓が、「ヒャっ!」て声と共に、"キュっ!" となります。

そのときの日本人からすれば、外国人が日本の中心地へ入ってくるなんて、ましてや我らが将軍様に直接会うだなんて、考えられない……。

前例がない。アメリカ人得体が知れない。大事な人に、よくわかんないヤツを会わせたくない。イヤだイヤだイヤだ。

幕府のみなさんは、ハリスさんの要望をのらりくらりかわして、なんとか下田に押しとどめようと頭をひねります。

その指令を受けて、現場で頑張る下田奉行の人たち。

下田奉行「ハリスさん、下田でお話ししましょ? ね?」
ハリス「下田でですか」
下田奉行「そうですそうです! ここはいいところでしょ? ね、下田でお話ししましょ!」
ハリス「なるほど……じゃ、ちょいと条約でも結びますか」
下田奉行「じょ、ジョウヤク?」
ハリス「日米和親条約を、チョコっと補う感じのやつを結びませんか?」
下田奉行「補う…条約…………あー、ですね! あ、いいですね! 結びましょ結びましょ! いや、僕らも結びたかったんですよ! そちらが結ぶって言いださなきゃ、こっちが勝手に結ぼうかなって思ってたくらい!」
ハリス「それはダメです」
下田奉行「そう、それはダメなんです! それはダメですけど結びましょ! いやー、結びたいなーー! もう三度の飯より結びが好きです! あ、これだとおむすびが好きみたいで、『おい! それも飯だろ!』って言われちゃいますね……? ハハハハハハハ!! さ、結びましょー!」
ハリス「………………はい」

日米追加条約(下田協約)ってのが結ばれます。

ハリスさんに満足してもらった下田奉行や幕府は、とりあえずひと安心。

「よかった〜」と胸を撫で下ろしている幕府に対して、ハリスさんは言います。

ハリス「で、将軍に会えるのはいつですか?」

それとこれとは別ハリス。

交換条件のつもりが、ただ条約追加されただけ。
条約結んだら、満足するかと思ったけど関係なかった。

ハリスさんのあまりに強い要望に、ついに幕府の方がポキっ……。

幕府「…………わーーかりましたよ!! じゃ、もう江戸に来てください!!!」

折れちゃいます。

折れなきゃしょうがない感じがして、ハリスさんの江戸行き、将軍との会見決定。

ハリスはなんで、そうまでして将軍に会いたいのか?

それは、"完全な開国"のため。

ペリーが到達しなかった"あの約束"を取り付ける……

つまり、

"貿易"

という決断を日本に迫ろうとしていたんです。

江戸っ子1「ちょ、どいてくれ! ごめんよ! おっとごめんよ!(ドンっ!)」
江戸っ子2「ってーな! どこ見て歩いてやがんだ、このすっとこどっこい!!」
江戸っ子1「なんだと! このひょうろくだまが!!」
江戸っ子2「おう!? おうおうおう!!」
江戸っ子1「おう!? おうおうおうおう!!」
江戸っ子2「おうおうおうおうおうおう…」
江戸っ子1「おうおうおうおうおうおう…」
江戸っ子3「オットセイかうるせーな!! あ! 来た!!!」
江戸っ子たち「ハリスだーーーーーーーーーーー!!!!!」

何万という見物人が騒ぐ中、花のお江戸に

ハリス、見参。

すかさず、13代将軍・徳川家定(いえさだ)との会見。

ハリス「ずっとお友達でいましょ! これ大統領のお手紙です!」
家定「手紙ありがとう! お友達でいましょ!」

おわり。淡白。イェイ(ギュッとするとこんな感じ)。

そう、将軍には「貿易しようぜ」なんて持ちかけません。

話すべきは、リアルに政治を動かしてるやつです。

ハリスの交渉相手は、老中首座(総理みてーなやつ)のバトンを阿部正弘さんから引き継いだ、

堀田正睦(ほったまさよし)

さんて人でした。

将軍との会見から数日後、ハリスっちは、堀田っちへ言います。

ハリス「ねぇねぇ。今度堀田っちの家行っていい?」
堀田正睦「うん! いいよー!」
ハリス「じゃみんなに声かけといてー!」

というアポがとられ(かわいいね、こんなんだったら)、堀田正睦邸に、ハリスと幕メン(幕府のメンバー)が集合します。

しかし、集まった幕メンは、ハリスにとんでもねー武器でぶん殴られることに……。

その武器の名前は、"スピーチ"。

ハリス「いいですか、蒸気機関などの登場により、世界はガラリと変化しました。この国も今のやり方を捨てなければならない。しかし、あなたたちの器用さと勤勉さがあれば、日本は偉大で強い国になる! そのためには!!」
幕メン「(ビクッ!)」
ハリス「いいですか………我々との貿易です」
幕メン「(ゴクリッ)」
ハリス「貿易は日本に大きな収益をもたらしそれによって立派な海軍を持つこともできる! そして………ここからは忠告です」
幕府メン「(ドックン……)」
ハリス「日本は今、(ゆっくりと……)いろんな国から狙われています」
幕メン「(ドキッ!!)」
ハリス「(ここからまくしたてるように)もう少ししたら艦隊を率いて、無理やり開国を迫りに来るでしょう! それを断れば戦争の可能性もある! 他の国が出す条件は、私たちのように穏やかなものじゃありません!! イギリスやフランスは今はまだ清(中国)との戦争で忙しいので、日本を訪れてないだけだ! 終われば必ずくる!!(そしてゆっくりと……)これは、必ずです」
幕メン「(ブルブル……)」
ハリス「さらに言うとロシアも来ます!」
幕メン「(ブルブルブルブル……)」
ハリス「そして、過酷な条件を突きつけてくるでしょう。ただ……我々アメリカと平和な通商条約を結んでおけば、他の外国に口をきいてあげることが出来る。(囁くように)『アメリカと一緒の条約にしようじゃないか』……と」
幕メン「!」
ハリス「アメリカは日本の盾となって、あなたたちを守りたい!」
幕メン「(うるうる……)」
ハリス「いいですか……私は、あくまで平和的に日本と交渉します。この国に迫る危険を回避して、強力で……幸せな国になる方法を説明しているまでです」
幕メン「(しゃべるの……うまい……)」

2時間以上の大演説を繰り広げたハリスさん。

彼らの心を掴み、脳に直接語りかけるような、スピーチ&プレゼンを聞いた幕メンは、

幕メン「刺さるわー!!」
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と、ハリスさんの言葉に、感心して、嘆いて、心を持っていかれたのでした。

ハリスの説得により、『貿易』という二文字がよぎりまくる幕メン。

日本、決断しちゃうのか?

でもここから、「いや〜実に日本っぽい!」って展開になるので、ある意味ご期待ください!

【漆黒が来た! え、なに?……「オトモダチニナリマショ」って言ってる!】

幕末という時代を語る上で、このワードだけは避けて通れないってのが、そう

鎖国(さこく)

こちらも
「あのーあれだろ…。日本があのー、、引きこもったやつだろ」
みたいなイメージの人が多かったりするんで、ちょいと説明させていただきます。

大多数の人が、

「海外との貿易を一切やってない」

という印象だと思いますが、これ実は正確じゃないんですよ奥さん(奥さん以外にもお伝えしたい)。

正解は、
「鎖(とざ)してないんだけどなぁ……でも鎖されてるって言われても、まぁ……しょうがないか」

です。

実は幕府、"相手"と"場所"を絞って、

海外貿易やってたんです。

長崎(ながさき)――オランダや中国
対馬(つしま)――朝鮮
薩摩(さつま)――琉球
蝦夷(えぞ)――アイヌ

という、限定キャンペーンで(ちなみにこの4つの場所を、"四つの口(四口)"なんて呼んだりするよー)。
 
だとすると、ギモンに思っちゃうのは、

「なんで欧米とは関わらず、限られた相手とだけの貿易だったの?」

これでございまさぁーね。

それにはこんなような理由が存在していたんです。

◆理由その1
かつてはポルトガルやスペインなんかも、日本に来てたんです。

でもそこでネックになったのが、"キリスト教の布教"ってやつ。

幕府、ふと思ったんです。

幕府「日本がキリスト教徒だらけになったら、支配しにくいよなぁ…。そいつらが団結して反乱とか起こしたら、もう最悪……
は! てかヨーロッパの奴ら、この国を侵略する準備のために、キリスト教を送り込んたんじゃ…? 
で、信者が増えたタイミングで軍隊がやってきて…………
禁止ーーー!!! キリスト教も、外国の船が来るのも禁止!!  日本人が勝手に海外へ行くのも禁止!! すでに行っちゃってるやつが日本に戻って来るのも禁止!!」

となったわけです。

◆理由その2
もし大名が、勝手に外国と貿易しちゃったら……。

幕府、ふと思ったんです。

「そこの藩がお金もうかって、力つけちゃって、幕府に歯向かってくるんじゃね? ……
禁止ーーー!!! 外国と勝手に貿易するの禁止!!
ん? 逆に言えば、外国との貿易を幕府が仕切ったら、幕府だけ潤うんじゃね? ……
認めるーーー!! 幕府が許した貿易だけは認める!!」

となったわけです。

だから、"幕府と幕府が認めた藩"のみが、"キリスト教を信仰してない中国や朝鮮"とだけ貿易してたんですね。

良い質問する人「ちょっと待って。オランダもキリスト教を信仰してる国だよね? なんで日本と貿易できてんの?」

それはですね……

オランダの人「キリスト教の布教とかしないっす! 自分ら純粋に貿易だけがしたいっす! 目を見てください!」
幕府の人「……キレイな目~。いいよ! 長崎住んで貿易しな!」
オランダの人「オー! ダンクユーヴェル!!」
幕府の人「うん! なんて言ったんだい?」
 
という感じで、日本との貿易を続行出来たんです(最初『平戸』、そのあと『出島』ってとこにうつるよー)。

なので、オランダ以外の"欧米"から見た日本は、

「……だ、国閉ざしてんじゃん! 鎖国じゃん! そう言われても仕方ないことしてるよ!」

となってたわけです。


でも、日本が鎖国やっちゃってる間、海の向こうでは、

「ウソ……でしょ……」

という変化が起こっていました。

アメリカやフランスでは、支配者と戦い、王様を追い出し、市民が政治に参加するようになった戦争が起こります。

これを
「この支配からの卒業戦争」

と言います(ウソです。アメリカ独立戦争とかフランス革命ってやつです)。

またイギリスでは、工業が機械化して、移動手段がちょー便利になった革命が起こります。

これを
「ちょー便利になった革命」

と言います(もちろんウソです。産業革命ってやつです)。

蒸気機関ってのが開発され、機械で動く蒸気船や、蒸気機関車が登場。

民主的になって、科学的になった欧米のみなさんは、近代化にこれからもどうぞよろしくねしちゃってたんです。

何もかもが、違います。

今までと何もかもが。

中2や高2の夏休み明けで、やけに大人びて登場する同級生よりも違うんです(ここは、みんな、各々のたとえを見つけてみてください)。

この変化、現代人が、PC、ネット、スマホを体感した時の衝撃と、どちらがすごかったんでしょう(どう思います)?

そして、日本が"江戸ってる"間、新しい時代へ突入したヨーロッパ&アメリカは、次なる行動に。

新しい市場と、原料をゲットできる場所、いわゆる

"植民地(その領土、支配しちゃうぜ)"

を求めて、海へとお出かけ。

ターゲットとなったのは……

アジアっす

中国にはイギリスが来て、アヘン戦争ってのが起こりもう大変(これホント大変なの)。

日本「え!? あの強かった中国が負けた!?」

ビビりまくってる日本にも、ロシア、フランス、アメリカ、イギリスの船が現れ

欧米「仲良くしてくれよ!!」
日本「いや、無理よ!!」

こんなやり取りが繰り返されていました。

そんな中、ついに"あの艦隊"がやって来て、日本の運命、

変わります。


嘉永6年6月3日(1853年7月8日)、

夏の日、夕方。

浦賀(神奈川県横須賀市)沖に、巨大な"黒い物体"が、出現。

やがて"それ"は、浦賀の人たちの目にとまります。


ナニカ……チカヅイテル…………。


静かにザワっとする浦賀


マックロデ、デカクテ……


驚きと恐怖を少しずつ確認する浦賀


バケ……モノ…………?


得体が知れなくて、ナニがナンだかさっぱりわからないけど、とにかく叫びたい……

浦賀の人たち「なんだアレはーーーーーーーーーーーーー!!!!!

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デカい大砲を積んだ、バカデカくて黒い船の一団。

サスケハナ号、ミシシッピ号、サラトガ号、プリマス号の4隻。

乗っているのは、

マシュー・カルブレイス・ペリー
(ジョンレノンかペリーかってくらい有名人)。

幕末の激動をアメリカから運んで来た"黒船来航"の瞬間。

浦賀の人「な、なんだアレ!? 船…だよな……? デケーー!」
浦賀の人「黒い船が黒い煙上げてる! キモーい!」
浦賀の人「おい! おい!! 波とか風とか関係ナシに進んでんぞ! 怖ぇーー!」
浦賀の人たち「デケーー!! キモーい!! 怖ぇーーー!!!」

日本人にとっては初めて見る蒸気船。

もちろん浦賀の騒然、とまりません。

勝手にグイっと入ってきた黒船たちに、浦賀奉行所(お役人)のみなさんも慌てフタめきちらします。

ちっこい船を近づけ『帰って! ここに停まらないで!』と紙に書いたメッセージ(フランス語だったらしい)を掲げますが、黒船の人たちガン無視。

その中で、役人の
中島三郎助(なかじまさぶろうすけ)さんは、
通訳さんを連れて黒船にちょー接近します。

通訳「あのー! 私オランダ語はできますー! 船に乗せてもらえませんかー!?」
黒船の人「ダメです。浦賀のちょーエラい役人さんとじゃなきゃ話しません」
通訳「……まいったなぁ」
中島「なんだって?」
通訳「エラい人とじゃなきゃ喋らないそうです……」
中島「あ、そう……。ま、じゃいいや、オレのこと副奉行って伝えて」
通訳「え? 中島さん副奉行じゃないじゃん」
中島「そうだよ。でも乗せないってんならしょうがねーじゃん」
通訳「……ま、しょうがないか。すいませーん! この人! 隣のこの人!  浦賀奉行所のNo.2ですー!」
黒船の人「乗りな」
 
乗れました。
 
ウソついたら(No.2ってウソついたのはホント)。

黒船の人「うちのペリーさんは、アメリカ大統領のお手紙を日本の将軍に渡すためにやって来ました」
中島「そうすか。でも日本の法律で、そういうのは長崎でしか交渉できないんで、長崎に行ってください」
黒船の人「やだ」
中島「え、やだなの?」
黒船の人「江戸に近いから浦賀に来たんだもん。長崎にはいかない。あと、今うちらの船を取り囲んでる日本の船たち追っ払ってちょーだい。サイアク攻撃するよ」
中島「ゲッ! みんなとりあえず帰ってー! 撃たれるんだってー! (周りの船いなくなる)とにかく私じゃ決められないんで、明日、上の役人が来るようにします」

あくる日。

香山「中島より立場が上の、No.1。香山と言います(これまたウソ。中島さんと立場は一緒)。お手紙を受け取るかどうか、江戸にお伺いを立ててみます。なので、返事くるまで4日待ってもらえませんか?」
黒船の人「は? この船だと1時間で江戸にいけるんだ。4日間なんて待てるわけない!」
香山「1時間で……!? じゃ、4日なんて待てませんよね……」
黒船の人「4日は無理だ。3日待ちます」
香山「あ、3日は待てるんだ!? え…と……ありがとうございます……」

3日間待ってもらえました(らしいっすよ)。

一方その頃、「アメリカ艦隊が来た」という報せを受けた幕府は……

「アメリカが!!!? やっぱりなーー!!! 」

そう、実は幕府、アメリカが来ることを事前に知ってたんです。

教えてくれたのは

オランダ「幕府ちゃん! アメリカが、開国を迫りに、近々日本を訪れるらしいよ!!」

仲良しオランダちゃん("オランダ風説書(ふうせつがき)"、"別段風説書(べつだんふうせつがき)"って書類が定期的に届いてたんだよー)。

予想通りにやって来たアメリカは、こっちの法律ムシして浦賀に現れ、大砲積んだとんでもねー船をバックに、手紙を受け取れと迫ってくる。

幕府は認識します。

「あ………これ脅されてるわ」

老中1「どーーーーーすんだよ!!! ペリーとかいうやつ、浦賀あたりで手紙受け取れって言ってんぞ!!!」
老中2「ダメに決まってんだろ!! 呼ばれてもねーのに飛び出てジャジャジャジャーンな欧米とは、長崎でしか対応しないって法律だろ!!」
老中1「んじゃ断って大砲撃たれて戦争になってジャジャジャジャーンでもいいんかテメーは!!」
老中2「そうとは言ってねーよ! てかジャジャジャジャーンてなんだ!」
老中1「オメー発信だよ!!」

危機的状況にジャジャジャジャーンが止まらない幕府ですが、

老中首座(今でいう内閣総理大臣かな)
阿部正弘(あべまさひろ)

さんて人、バシッ! と決めます。

阿部「みんな静まれ!! いいか、外国とのやり取りはすべて長崎で行うと決まってる! 浦賀で手紙を受け取ることなんてできない! …だからもう今回だけだ!!」

法律まげることを決めます。

結局、お手紙は浦賀付近で受け取ることに。

老中「阿部さーん!アメリカ大統領からの親書(お手紙)届きましたーーーー!!!」
阿部「そうか! なになに……

アメリカ合衆国大統領 フィルモアより 日本の皇帝陛下(徳川将軍のこと)へ
ねー、アメリカとお友達になって、商業上のお付き合いをしません?

(長いのではしょります)

アメリカさー、中国に行ったり、捕鯨(クジラ捕まえちゃう)したりすんの。
だからもし、日本の近くで船が難破したら、乗っていた人を保護してあげて欲しいんだ。
あと、航海が長いから、日本で一休みさせて。そんときお支払いはするから、石炭ちょーだい、食料ちょーだい、水ちょーだい。港開いてちょーだい、貿易してしょーだい。フィルモアでした』
……厚かましいわーーー!!!」
(もっと丁寧な文章で、もっと長いす。要点だけまとめると、こんな感じ。)

予想通り、「国開いてくれよー」的な文章。

お手紙読んで、幕府はゲロへこみ。

しかし、そんなゲロ幕府のみんなを勇気づけるように、阿部さんはドシャッ! っと決めます。

阿部「お手紙受け取ったんだから、ソッコー帰ってもらおう! で、その後どうするか考えよう!!」

後回しにすることを決めます。

幕府は、そっちの要求飲んだんだから早く帰ってくれと、ペリーさんにお願い。

ペリー「いいけど、手紙の答えをもらいに、来年の春またくるからね」
幕府側「……黒船、4艦全部引き連れてくるんすか……?」
ペリー「全艦率いてくるよ。この4艦は艦隊のごく一部だし。もっと増えるよね」
幕府側「あ……あ………が……」

ラディッツやっと倒したのに、次くるサイヤ人もっと強いパターンのやつ(わからない方は存分にスルーしてください)。

アメリカが……来年パワーアップして帰って来る……。

いよいよ迫られる本当の決断。

要求をのんで開国か、断って攘夷(外国人追っ払う)か。

仲良く or 戦争。

今度こそ……正真正銘のガケップチ――。

老中「阿部さん、どう…しましょ……?」
阿部「よし!!! 決めた!!」
老中「おっきい声!」
阿部「国開くか、戦争になるかはわからんが、今出来る最善のことをやる!!!」

阿部正弘、改革モード突入。

幕府のルールをブチ壊していきます。

老中「ちょちょちょ、ちょっと阿部さん! 御三家や外様と連携とってるらしいじゃないですか! マズいですよ! 幕府があの人たちの意見聞いちゃ!(エピソード0読んでね)」
阿部さん「確かにな」
阿部さんの部下「確かにって……こんな時こそ、優秀な人の意見が必要……。そういうことですか!?」

さらに、「外国人はゼッタイ追い払う!!」と叫んでる、とってもジョーイ(攘夷)おじさん

水戸藩主・徳川斉昭(なりあき)

っていう御三家の人を、海防参与(ってポスト)に招き、幕府の政治に参加させます。

阿部さんの部下「阿部さーーーん! 意見聞くならまだしも、幕府の政治に参加はアウトです! 斉昭さん御三家ですよ!?」
阿部「そうだな」
阿部さんの部下「そうだなって……攘夷のカタマリみたいな斉昭さんを政治に参加させたら、みんなの『国を守る』って意識が高くなる……。そういうことですね!?」
阿部さん「フッ……」
阿部さんの部下「ニヒルな笑みでごまかさないでください!」

お次は、海防掛(かいぼうがかり。今で言う"防衛省"みたいなもんかな)ってやつに、身分も、年齢も関係なく、才能のある人をバッテキします。

永井尚志(ながいなおゆき)
大久保一翁(おおくぼいちおう)
岩瀬忠震(いわせただなり)

って人たち(他にもいるけど、このあと登場する人書いたよ)。

阿部さんの部下「阿部さん阿部さん阿部さん!! あんなどこの馬の骨ともわからないヤツら採用していいんすか!?家柄じゃなく、才能や能力を優先させるってことですか!?」
阿部「ヘッ!」
阿部さんの部下「『ヘッ!』じゃないですよ阿部さん!!」

まだまだ続くブチ壊し。

徳川幕府は、将軍や老中の決定が全てで、下の者の意見を聞く機会なんてありません。

それを、

阿部「みなさーん! 国の大ピンチです! みんなの意見を聞かせてください!」
阿部さんの部下「ちょっと阿部さん!! そんなことした…」
阿部「今は日本全体で力を合わせなきゃダメなときです! みなさん! 意見をお願いします! 身分なんて関係ありません! 大名だろうが、庶民だろうが、エラかろうが、エラくなかろうが、みなさんの声を大大大募集します!!」

阿部正弘】意見募ってみた【幕末】

ガチでみーんなから意見募るんです。

ポンコツ意見もドシドシ届くんですが、大久保一翁さんや阿部さんは、ゴミ山の中からダイヤを見つけます。

『外国の攻撃を防ぐには軍艦がいるけど、今は江戸のガードを厳重にして、おいおい軍艦を用意しましょうや。
軍艦の製造と、それに関わる人件費ってやつにゃあ、ベラボーな金が必要だ。国民の税金からだと反発を招くことうけあいだから、開国して貿易で得た利益をその費用にあてるってのはどうだい。
それにだ、軍に関する制度や訓練を、西洋風に改革しなきゃなんねぇ。そのためには人材だ。最新の勉強ができる学校を設立した方がいいだろうな』
(もちろんこちらも丁寧に書かれてるよ。「おそれながら…」的なトーンで)

大久保一翁「な……なんじゃこりゃ!!」
阿部「素晴らしい意見書だ!! えーと、これ書いたやつの名前は……」

この海防意見書の作成者こそ、まだ幕府の下っぱ役人という立場だった

勝海舟

だったんです。(勝さんはこの意見書をキッカケに、幕府の中で出世していくよー)。

阿部さんの改革。

家柄が優先されるこの時代に、ルールや身分関係なく、優秀な人材と意見を集めるというやり方は、素晴らしいものだったと思います。

でもこのやり方には、とんでもないデメリットが待ち構えてました。

幕府って、200年以上も「将軍様の命令は絶対」方式でやってきたのに、みんなからの意見を募っちゃったことで、

「あれ? これ幕府決定力なくなってない? 力弱くなってんじゃん? これ、オレらも政治に口出せるぞ!!!」

という雰囲気が日本中に漂い、大名や朝廷ばかりでなく、もっと下の人まで幕府にもの申すようになる。

日本を思った阿部さんの行動で、圧倒的支配者だった幕府の権力が

音を立てて崩れ始めたんです……。

この時代、社会を風刺した"狂歌"ってやつが流行ってたんですが、有名なやつを一つ。

「泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん)
         たった四杯で夜も眠れず」

"上喜撰"というのは高級茶のブランド名。

4杯飲んだらカフェインのせいで夜寝れないさまと、"蒸気船"が4隻やってきただけで、あわてまくってる幕府をバカにしてる、というのがかかっている歌です。

うまい。

ペリーちゃんの訪問をきっかけに、日本は、これまで体験したことのない世界に足を踏み入れることになります。

開国を迫る、アメリカという脅威。
はたして、日本が導き出した答えとは……(予告っぽいですが、予告です)。