【映画ヒットして聖地巡礼してんのかってくらい来る】
幕末エピソード2です。
それでは前回の軽いおさらいを。
ペリーちゃん、黒船で日本にやって来る。
↓
幕府大あわて。
↓
とりあえず、アメリカからのお手紙受け取る。
↓
ペリーちゃん「来年またくるよ」宣言。
↓
みんなから意見聞いて、幕府の力、パワーダウン。
浦賀に突如現れた黒船。
さんざん振り回された徳川ジャパンは、「また来るよ」と言ったペリーさんに頭を抱えます。
幕府の人「いったんペリー帰ったけど、これからどうすりゃいいんだよ……」
幕府の人「あのー…。眉毛が八の字中、申し訳ありません。今度はロシアが来てますが……」
幕府の人「え!? もーーー、オレなんか悪いことしたーーー!!?」
追い討ちをかけるように、今度はロシアのプチャーチンって人がやって来て、幕府、大いにグズります。
プチャーチン「仲良くしよっか? ねぇー開国しようよ~!」
幕府の人「ロシアもアメリカと同じようなこと言ってきた! これ…どうすんのよ!?」
おもくそテンパる幕府ですが、それに負けじとテンパった人物が
ペリー「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい! ロシアが日本に行ったーー!!!!」
香港にいたペリーさんでした。
ペリー「最初に開国させてこそ、有利になることがいっぱいあるんだ!! 他の国に先を越されちゃまずすぎる……日本行くぞ!!!」
ペリー部下「えー! 真冬の海渡るのキツーい! ヤダー!」
ペリー「文句言うな! ほれ、タータターンターンターンターン!♫」
ペリー部下「………タータターンターン……」
全員でアメリカ国歌を歌いながら(歌ってないと思います)、予定前倒しで、再び日本にやってきます。
予告通り船増えて、7隻で日本到着(あとで追加されて9隻)。
日本側「……春って言ってましたよね?」
ペリー「どんなことにもチャレンジする。それがオレたち……U・S・A!」
アメリカ側「U・S・A! U・S・A! U・S・A! U・S……」

日本側「………こっちは、将軍様(12代家慶)が亡くなられて1年経ってないんです。バタバタしてるこの時期に来られても……。それに、ここ江戸湾(今の東京湾)すよ。前回浦賀の今回江戸湾…。さすがに江戸に近づきすぎです」
ペリー「新たな道を切り開いて行く。それがオレたち……U・S・A!」
アメリカ側「U・S・A! U・S・A! U・S・A! ご一緒に…U・S・…」
日本側「やりません。そのノリ知らないです。 あの、浦賀か鎌倉に移動してもらえませんか」
ペリー「ムリです」
日本側「なんで」
ペリー「江戸行くから」
日本側「ムリです」
ペリー「なんで」
日本側「ムリだから」
ペリー「でも行く」
日本側「浦賀鎌倉」
ペリー「ムリです」
日本側「じゃ横浜」
ペリー「あーね」
移動しました。
話し合いの場所は横浜村(横浜市だよ)に決定します。
で、移動して早速、
幕府「さぁさ! お茶でも飲んでゆっく…」
ペリー「お手紙の返答ください」
幕府「……………ですよね」
もう絶対、何らかの答えを出さなきゃダメ。
もうちょい待ってなんて言えない状況。
こうなると大事なのは、"譲れない"部分をはっきりしておくことです。
交渉にあたった、林大学頭(はやしだいがくのかみ)さん
ゆずれない願いを抱きしめます。
林大学頭「石炭や食料を提供するとか、難破したら保護するとかはオッケーです」
ペリー「マジで!? いいねー!!」
林「ただし……"貿易"は無理です!!」
ペリー「はにゃ?」
林「鎖国は昔からの日本の法律! 欧米との貿易はその決まりを破ることになる! だから、貿易だけはできない!!!」
ペリー「うん、別にいいよー」
"譲れない"願い、抱きしめてもらえました。
貿易やったら、今まで築き上げた幕府のルールが崩れ、さらには、欧米に侵略される危険性も出てくる……林さん、そこだけは突っぱねたんです。
でも、ペリーさんは貿易以外の要求が通ったことに大満足で、それにオッケーサイン。
お互いの主張をそれぞれが受け入れ、これからの話し合い…に……さらなる……
……………
もう着地点見つかってね?
日本、アメリカと関わることをオッケーしたし、アメリカもそれに満足してる……
だとすると、
200年以上続いていた"制限された交流"……
おわりだお。
ペリー&林「条約……結ぶぞーーー!!!!!」
ということで、
日米和親条約(にちべいわしんじょうやく)
って名前の条約が結ばれましたとさ(『神奈川条約』って言ったりもするよ)。
主な内容はこんな感じ(全部で12ヶ条ね)。
1、アメリカと日本は、永久に仲良しね。
2、下田港(静岡県)と箱館港(北海道)開いてね。ここでは薪、食料、石炭がもらえることにしまーす。
3、アメリカの船が難破したら、乗ってる人保護してね。
9、今後もし、日本が他の国ともっといい条件で条約結ぶとするよね。そしたらその条件は自動的にアメリカにもあてはまることにしてー("最恵国待遇(さいけいこくたいぐう)"っていうよ)。
11、下田に、外交官の人おかせてね。
このあと、場所を下田に移して話し合いが続き、細かい条約が決定します(『下田条約』ってんだ)。
海外への窓を少しだけ開けた日本。
これから続く、異国との新鮮すぎる交流は、あっと驚く大ハプニングを箱買いしてくるのでした(間違えがちだけど、この時点じゃ"完全に開国"してないよ。貿易オッケーしてないんで)。
さて、ペリーさん再来日からの条約で、「これまで以上に外国に備えるぞ」と、決心を固めたのが
阿部正弘「もっと改革だーーーーー!!!」
改革マニア、阿部正弘です(マニアとかじゃないですが)。
権力弱くなろうが関係なし。
阿部さんは幕府の中心で改革を叫びます。
老中「阿・部・さん!! 諸藩に、大きな船造ること許可したんすよね!? 藩が勝手にデケー船造るのは禁止されてます! いろんな藩が船造って、幕府に歯向かってきたらどうするんすか!?」
阿部「どうするかな」
老中「今はその危険性を考えるより、外国の脅威に備える方が先だってことですか!?」
阿部「にんともかんとも」
老中「『にんともかんとも』ってなんだよ!! 会話してくれよ!!」
さらに、人材を育てるため、
阿部「あのねー、戦闘の訓練所と、海軍の学校と、海外の学問勉強するとこ…欲しい!!」
いろんな施設を作り上げるんです(それぞれ、講武所(こうぶしょ)、長崎海軍伝習所(ながさきかいぐんでんしゅうじょ)、蕃書調所(ばんしょしらべしょ)って名前。蕃書調所は東京大学の元になった1つっす)。
阿部さんは、色とりどりの改革を成し遂げ、
安静の改革
と呼ばれる趣味を極めたのでした(決して趣味じゃないです。
実際の阿部さんも、会話の中で自分の意見をあまり言わなかったらしいです。失言して、相手につつかれたら困るからですって。なんか現代の政治家と似てるー)
外国来ることに備えてたら……来るんですね、条約の噂を聞きつけたみなさんが。
イギリス「聞いたよぉ。アメリカと条約結んだんだってぇ?」
日本「な、なんですかあなたは! 急に来て……!」
イギリス「ずるいなぁ、アメリカとだけ楽しいことして……オレとも条約結んでくれよぉ」
日本「な、なにを言ってるんですか……そんなことできるわけな…」
イギリス「いいじゃねーかよ!」
日本「きゃっ!」
日英和親条約締結。
ロシア「オレもだ!」
日本「きゃっ!」
日露和親条約締結。
オランダ「こっちもだよ!」
日本「きゃっ!」
日蘭和親条約締結。
結んだというか、結ばされたというか、こんなに連続で結ぶ? ってくらい結んじゃう幕府。
結んで(条約)、開いて(開国)、手をうって(合意して)、結んで(条約)。
また開いて(開国)、手をうって(合意して)、その手を上に(お手上げ状態)……。
(房野オリジナル『むすんでひらいて 幕末ver.』でした)
結んで開き疲れた幕府……ですが、欧米のみなさんはまったく休憩をくれません。
開国ダ・カーポをかまして、またもや、Aメロアメリカの登場。
条約の中にあった『11、下田に、外交官の人おかせてね』の約束通り、初代駐日領事(はじめて日本に住む外交官)、
タウンゼント・ハリス
が、どんぶらこやってきたんです。
ハリス「おじゃましまーす」
日本側「ちょちょちょちょちょちょちょ」
ハリス「なになになになになになになに」
日本側「あの……聞いてないです」
ハリス「え? 条約にあったでしょ」
日本側「あったけど、『両国(日本とアメリカ)政府が話しあってオッケーなら』って、なってましたよ。まだ何にも話し合ってないですよね?」
ハリス「違いますよ、『両国政府の"どちらか"が、オッケーなら』ですよ。で、アメリカがオッケーなんで、上がらせてもらいますね。では失礼し……」
日本側「待って待って待って待って待って」
ハリス「なんだ君は!?」
日本側「なんだ君はってか。いやだから、条約に『お互い話し合って』って……」
ハリス「ハー……まぁ多分ですけど、通訳するときに行き違いがあったんでしょうね。でも、知ったこっちゃありません。どっちの言い分が正しいか、それはまた、アメリカと日本の政府の話し合いで決めてもらうことです。私の知ったこっちゃありません。ですので……上がりまーーーーーーーーす(キーーーーーン)!!!!!」
日本側「あーーーーーー!!!!」
結局、ハリスさん上陸。
で、ソッコー
ハリス「江戸に行って、将軍に会いたいです」
幕府「将軍に!!!!!!?」
幕府のみなさんの心臓が、「ヒャっ!」て声と共に、"キュっ!" となります。
そのときの日本人からすれば、外国人が日本の中心地へ入ってくるなんて、ましてや我らが将軍様に直接会うだなんて、考えられない……。
前例がない。アメリカ人得体が知れない。大事な人に、よくわかんないヤツを会わせたくない。イヤだイヤだイヤだ。
幕府のみなさんは、ハリスさんの要望をのらりくらりかわして、なんとか下田に押しとどめようと頭をひねります。
その指令を受けて、現場で頑張る下田奉行の人たち。
下田奉行「ハリスさん、下田でお話ししましょ? ね?」
ハリス「下田でですか」
下田奉行「そうですそうです! ここはいいところでしょ? ね、下田でお話ししましょ!」
ハリス「なるほど……じゃ、ちょいと条約でも結びますか」
下田奉行「じょ、ジョウヤク?」
ハリス「日米和親条約を、チョコっと補う感じのやつを結びませんか?」
下田奉行「補う…条約…………あー、ですね! あ、いいですね! 結びましょ結びましょ! いや、僕らも結びたかったんですよ! そちらが結ぶって言いださなきゃ、こっちが勝手に結ぼうかなって思ってたくらい!」
ハリス「それはダメです」
下田奉行「そう、それはダメなんです! それはダメですけど結びましょ! いやー、結びたいなーー! もう三度の飯より結びが好きです! あ、これだとおむすびが好きみたいで、『おい! それも飯だろ!』って言われちゃいますね……? ハハハハハハハ!! さ、結びましょー!」
ハリス「………………はい」
日米追加条約(下田協約)ってのが結ばれます。
ハリスさんに満足してもらった下田奉行や幕府は、とりあえずひと安心。
「よかった〜」と胸を撫で下ろしている幕府に対して、ハリスさんは言います。
ハリス「で、将軍に会えるのはいつですか?」
それとこれとは別ハリス。
交換条件のつもりが、ただ条約追加されただけ。
条約結んだら、満足するかと思ったけど関係なかった。
ハリスさんのあまりに強い要望に、ついに幕府の方がポキっ……。
幕府「…………わーーかりましたよ!! じゃ、もう江戸に来てください!!!」
折れちゃいます。
折れなきゃしょうがない感じがして、ハリスさんの江戸行き、将軍との会見決定。
ハリスはなんで、そうまでして将軍に会いたいのか?
それは、"完全な開国"のため。
ペリーが到達しなかった"あの約束"を取り付ける……
つまり、
"貿易"
という決断を日本に迫ろうとしていたんです。
江戸っ子1「ちょ、どいてくれ! ごめんよ! おっとごめんよ!(ドンっ!)」
江戸っ子2「ってーな! どこ見て歩いてやがんだ、このすっとこどっこい!!」
江戸っ子1「なんだと! このひょうろくだまが!!」
江戸っ子2「おう!? おうおうおう!!」
江戸っ子1「おう!? おうおうおうおう!!」
江戸っ子2「おうおうおうおうおうおう…」
江戸っ子1「おうおうおうおうおうおう…」
江戸っ子3「オットセイかうるせーな!! あ! 来た!!!」
江戸っ子たち「ハリスだーーーーーーーーーーー!!!!!」
何万という見物人が騒ぐ中、花のお江戸に
ハリス、見参。
すかさず、13代将軍・徳川家定(いえさだ)との会見。
ハリス「ずっとお友達でいましょ! これ大統領のお手紙です!」
家定「手紙ありがとう! お友達でいましょ!」
おわり。淡白。イェイ(ギュッとするとこんな感じ)。
そう、将軍には「貿易しようぜ」なんて持ちかけません。
話すべきは、リアルに政治を動かしてるやつです。
ハリスの交渉相手は、老中首座(総理みてーなやつ)のバトンを阿部正弘さんから引き継いだ、
堀田正睦(ほったまさよし)
さんて人でした。
将軍との会見から数日後、ハリスっちは、堀田っちへ言います。
ハリス「ねぇねぇ。今度堀田っちの家行っていい?」
堀田正睦「うん! いいよー!」
ハリス「じゃみんなに声かけといてー!」
というアポがとられ(かわいいね、こんなんだったら)、堀田正睦邸に、ハリスと幕メン(幕府のメンバー)が集合します。
しかし、集まった幕メンは、ハリスにとんでもねー武器でぶん殴られることに……。
その武器の名前は、"スピーチ"。
ハリス「いいですか、蒸気機関などの登場により、世界はガラリと変化しました。この国も今のやり方を捨てなければならない。しかし、あなたたちの器用さと勤勉さがあれば、日本は偉大で強い国になる! そのためには!!」
幕メン「(ビクッ!)」
ハリス「いいですか………我々との貿易です」
幕メン「(ゴクリッ)」
ハリス「貿易は日本に大きな収益をもたらしそれによって立派な海軍を持つこともできる! そして………ここからは忠告です」
幕府メン「(ドックン……)」
ハリス「日本は今、(ゆっくりと……)いろんな国から狙われています」
幕メン「(ドキッ!!)」
ハリス「(ここからまくしたてるように)もう少ししたら艦隊を率いて、無理やり開国を迫りに来るでしょう! それを断れば戦争の可能性もある! 他の国が出す条件は、私たちのように穏やかなものじゃありません!! イギリスやフランスは今はまだ清(中国)との戦争で忙しいので、日本を訪れてないだけだ! 終われば必ずくる!!(そしてゆっくりと……)これは、必ずです」
幕メン「(ブルブル……)」
ハリス「さらに言うとロシアも来ます!」
幕メン「(ブルブルブルブル……)」
ハリス「そして、過酷な条件を突きつけてくるでしょう。ただ……我々アメリカと平和な通商条約を結んでおけば、他の外国に口をきいてあげることが出来る。(囁くように)『アメリカと一緒の条約にしようじゃないか』……と」
幕メン「!」
ハリス「アメリカは日本の盾となって、あなたたちを守りたい!」
幕メン「(うるうる……)」
ハリス「いいですか……私は、あくまで平和的に日本と交渉します。この国に迫る危険を回避して、強力で……幸せな国になる方法を説明しているまでです」
幕メン「(しゃべるの……うまい……)」
2時間以上の大演説を繰り広げたハリスさん。
彼らの心を掴み、脳に直接語りかけるような、スピーチ&プレゼンを聞いた幕メンは、
幕メン「刺さるわー!!」

と、ハリスさんの言葉に、感心して、嘆いて、心を持っていかれたのでした。
ハリスの説得により、『貿易』という二文字がよぎりまくる幕メン。
日本、決断しちゃうのか?
でもここから、「いや〜実に日本っぽい!」って展開になるので、ある意味ご期待ください!
【漆黒が来た! え、なに?……「オトモダチニナリマショ」って言ってる!】
幕末という時代を語る上で、このワードだけは避けて通れないってのが、そう
鎖国(さこく)。
こちらも
「あのーあれだろ…。日本があのー、、引きこもったやつだろ」
みたいなイメージの人が多かったりするんで、ちょいと説明させていただきます。
大多数の人が、
「海外との貿易を一切やってない」
という印象だと思いますが、これ実は正確じゃないんですよ奥さん(奥さん以外にもお伝えしたい)。
正解は、
「鎖(とざ)してないんだけどなぁ……でも鎖されてるって言われても、まぁ……しょうがないか」
です。
実は幕府、"相手"と"場所"を絞って、
海外貿易やってたんです。
長崎(ながさき)――オランダや中国
対馬(つしま)――朝鮮
薩摩(さつま)――琉球
蝦夷(えぞ)――アイヌ
という、限定キャンペーンで(ちなみにこの4つの場所を、"四つの口(四口)"なんて呼んだりするよー)。
だとすると、ギモンに思っちゃうのは、
「なんで欧米とは関わらず、限られた相手とだけの貿易だったの?」
これでございまさぁーね。
それにはこんなような理由が存在していたんです。
◆理由その1
かつてはポルトガルやスペインなんかも、日本に来てたんです。
でもそこでネックになったのが、"キリスト教の布教"ってやつ。
幕府、ふと思ったんです。
幕府「日本がキリスト教徒だらけになったら、支配しにくいよなぁ…。そいつらが団結して反乱とか起こしたら、もう最悪……
は! てかヨーロッパの奴ら、この国を侵略する準備のために、キリスト教を送り込んたんじゃ…?
で、信者が増えたタイミングで軍隊がやってきて…………
禁止ーーー!!! キリスト教も、外国の船が来るのも禁止!! 日本人が勝手に海外へ行くのも禁止!! すでに行っちゃってるやつが日本に戻って来るのも禁止!!」
となったわけです。
◆理由その2
もし大名が、勝手に外国と貿易しちゃったら……。
幕府、ふと思ったんです。
「そこの藩がお金もうかって、力つけちゃって、幕府に歯向かってくるんじゃね? ……
禁止ーーー!!! 外国と勝手に貿易するの禁止!!
ん? 逆に言えば、外国との貿易を幕府が仕切ったら、幕府だけ潤うんじゃね? ……
認めるーーー!! 幕府が許した貿易だけは認める!!」
となったわけです。
だから、"幕府と幕府が認めた藩"のみが、"キリスト教を信仰してない中国や朝鮮"とだけ貿易してたんですね。
良い質問する人「ちょっと待って。オランダもキリスト教を信仰してる国だよね? なんで日本と貿易できてんの?」
それはですね……
オランダの人「キリスト教の布教とかしないっす! 自分ら純粋に貿易だけがしたいっす! 目を見てください!」
幕府の人「……キレイな目~。いいよ! 長崎住んで貿易しな!」
オランダの人「オー! ダンクユーヴェル!!」
幕府の人「うん! なんて言ったんだい?」
という感じで、日本との貿易を続行出来たんです(最初『平戸』、そのあと『出島』ってとこにうつるよー)。
なので、オランダ以外の"欧米"から見た日本は、
「……だ、国閉ざしてんじゃん! 鎖国じゃん! そう言われても仕方ないことしてるよ!」
となってたわけです。
でも、日本が鎖国やっちゃってる間、海の向こうでは、
「ウソ……でしょ……」
という変化が起こっていました。
アメリカやフランスでは、支配者と戦い、王様を追い出し、市民が政治に参加するようになった戦争が起こります。
これを
「この支配からの卒業戦争」
と言います(ウソです。『アメリカ独立戦争』とか『フランス革命』ってやつです)。
またイギリスでは、工業が機械化して、移動手段がちょー便利になった革命が起こります。
これを
「ちょー便利になった革命」
と言います(もちろんウソです。『産業革命』ってやつです)。
蒸気機関ってのが開発され、機械で動く蒸気船や、蒸気機関車が登場。
民主的になって、科学的になった欧米のみなさんは、近代化にこれからもどうぞよろしくねしちゃってたんです。
何もかもが、違います。
今までと何もかもが。
中2や高2の夏休み明けで、やけに大人びて登場する同級生よりも違うんです(ここは、みんな、各々のたとえを見つけてみてください)。
この変化、現代人が、PC、ネット、スマホを体感した時の衝撃と、どちらがすごかったんでしょう(どう思います)?
そして、日本が"江戸ってる"間、新しい時代へ突入したヨーロッパ&アメリカは、次なる行動に。
新しい市場と、原料をゲットできる場所、いわゆる
"植民地(その領土、支配しちゃうぜ)"
を求めて、海へとお出かけ。
ターゲットとなったのは……
アジアっす。
中国にはイギリスが来て、アヘン戦争ってのが起こりもう大変(これホント大変なの)。
日本「え!? あの強かった中国が負けた!?」
ビビりまくってる日本にも、ロシア、フランス、アメリカ、イギリスの船が現れ
欧米「仲良くしてくれよ!!」
日本「いや、無理よ!!」
こんなやり取りが繰り返されていました。
そんな中、ついに"あの艦隊"がやって来て、日本の運命、
変わります。
嘉永6年6月3日(1853年7月8日)、
夏の日、夕方。
やがて"それ"は、浦賀の人たちの目にとまります。
ナニカ……チカヅイテル…………。
静かにザワっとする浦賀。
マックロデ、デカクテ……
驚きと恐怖を少しずつ確認する浦賀。
バケ……モノ…………?
得体が知れなくて、ナニがナンだかさっぱりわからないけど、とにかく叫びたい……
浦賀の人たち「なんだアレはーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
デカい大砲を積んだ、バカデカくて黒い船の一団。
乗っているのは、
マシュー・カルブレイス・ペリー
(ジョンレノンかペリーかってくらい有名人)。
幕末の激動をアメリカから運んで来た"黒船来航"の瞬間。
浦賀の人「な、なんだアレ!? 船…だよな……? デケーー!」
浦賀の人「黒い船が黒い煙上げてる! キモーい!」
浦賀の人「おい! おい!! 波とか風とか関係ナシに進んでんぞ! 怖ぇーー!」
浦賀の人たち「デケーー!! キモーい!! 怖ぇーーー!!!」
日本人にとっては初めて見る蒸気船。
もちろん浦賀の騒然、とまりません。
勝手にグイっと入ってきた黒船たちに、浦賀奉行所(お役人)のみなさんも慌てフタめきちらします。
ちっこい船を近づけ『帰って! ここに停まらないで!』と紙に書いたメッセージ(フランス語だったらしい)を掲げますが、黒船の人たちガン無視。
その中で、役人の
中島三郎助(なかじまさぶろうすけ)さんは、
通訳さんを連れて黒船にちょー接近します。
通訳「あのー! 私オランダ語はできますー! 船に乗せてもらえませんかー!?」
黒船の人「ダメです。浦賀のちょーエラい役人さんとじゃなきゃ話しません」
通訳「……まいったなぁ」
中島「なんだって?」
通訳「エラい人とじゃなきゃ喋らないそうです……」
中島「あ、そう……。ま、じゃいいや、オレのこと副奉行って伝えて」
通訳「え? 中島さん副奉行じゃないじゃん」
中島「そうだよ。でも乗せないってんならしょうがねーじゃん」
通訳「……ま、しょうがないか。すいませーん! この人! 隣のこの人! 浦賀奉行所のNo.2ですー!」
黒船の人「乗りな」
乗れました。
ウソついたら(No.2ってウソついたのはホント)。
黒船の人「うちのペリーさんは、アメリカ大統領のお手紙を日本の将軍に渡すためにやって来ました」
中島「そうすか。でも日本の法律で、そういうのは長崎でしか交渉できないんで、長崎に行ってください」
黒船の人「やだ」
中島「え、やだなの?」
黒船の人「江戸に近いから浦賀に来たんだもん。長崎にはいかない。あと、今うちらの船を取り囲んでる日本の船たち追っ払ってちょーだい。サイアク攻撃するよ」
中島「ゲッ! みんなとりあえず帰ってー! 撃たれるんだってー! (周りの船いなくなる)とにかく私じゃ決められないんで、明日、上の役人が来るようにします」
あくる日。
香山「中島より立場が上の、No.1。香山と言います(これまたウソ。中島さんと立場は一緒)。お手紙を受け取るかどうか、江戸にお伺いを立ててみます。なので、返事くるまで4日待ってもらえませんか?」
黒船の人「は? この船だと1時間で江戸にいけるんだ。4日間なんて待てるわけない!」
香山「1時間で……!? じゃ、4日なんて待てませんよね……」
黒船の人「4日は無理だ。3日待ちます」
香山「あ、3日は待てるんだ!? え…と……ありがとうございます……」
3日間待ってもらえました(らしいっすよ)。
一方その頃、「アメリカ艦隊が来た」という報せを受けた幕府は……
「アメリカが!!!? やっぱりなーー!!! 」
そう、実は幕府、アメリカが来ることを事前に知ってたんです。
教えてくれたのは
オランダ「幕府ちゃん! アメリカが、開国を迫りに、近々日本を訪れるらしいよ!!」
仲良しオランダちゃん("オランダ風説書(ふうせつがき)"、"別段風説書(べつだんふうせつがき)"って書類が定期的に届いてたんだよー)。
予想通りにやって来たアメリカは、こっちの法律ムシして浦賀に現れ、大砲積んだとんでもねー船をバックに、手紙を受け取れと迫ってくる。
幕府は認識します。
「あ………これ脅されてるわ」
老中1「どーーーーーすんだよ!!! ペリーとかいうやつ、浦賀あたりで手紙受け取れって言ってんぞ!!!」
老中2「ダメに決まってんだろ!! 呼ばれてもねーのに飛び出てジャジャジャジャーンな欧米とは、長崎でしか対応しないって法律だろ!!」
老中1「んじゃ断って大砲撃たれて戦争になってジャジャジャジャーンでもいいんかテメーは!!」
老中2「そうとは言ってねーよ! てかジャジャジャジャーンてなんだ!」
老中1「オメー発信だよ!!」
危機的状況にジャジャジャジャーンが止まらない幕府ですが、
老中首座(今でいう内閣総理大臣かな)
阿部正弘(あべまさひろ)
さんて人、バシッ! と決めます。
阿部「みんな静まれ!! いいか、外国とのやり取りはすべて長崎で行うと決まってる! 浦賀で手紙を受け取ることなんてできない! …だからもう今回だけだ!!」
法律まげることを決めます。
結局、お手紙は浦賀付近で受け取ることに。
老中「阿部さーん!アメリカ大統領からの親書(お手紙)届きましたーーーー!!!」
阿部「そうか! なになに……
『アメリカ合衆国大統領 フィルモアより 日本の皇帝陛下(徳川将軍のこと)へ
ねー、アメリカとお友達になって、商業上のお付き合いをしません?
(長いのではしょります)
アメリカさー、中国に行ったり、捕鯨(クジラ捕まえちゃう)したりすんの。
だからもし、日本の近くで船が難破したら、乗っていた人を保護してあげて欲しいんだ。
あと、航海が長いから、日本で一休みさせて。そんときお支払いはするから、石炭ちょーだい、食料ちょーだい、水ちょーだい。港開いてちょーだい、貿易してしょーだい。フィルモアでした』
……厚かましいわーーー!!!」
(もっと丁寧な文章で、もっと長いす。要点だけまとめると、こんな感じ。)
予想通り、「国開いてくれよー」的な文章。
お手紙読んで、幕府はゲロへこみ。
しかし、そんなゲロ幕府のみんなを勇気づけるように、阿部さんはドシャッ! っと決めます。
阿部「お手紙受け取ったんだから、ソッコー帰ってもらおう! で、その後どうするか考えよう!!」
後回しにすることを決めます。
幕府は、そっちの要求飲んだんだから早く帰ってくれと、ペリーさんにお願い。
ペリー「いいけど、手紙の答えをもらいに、来年の春またくるからね」
幕府側「……黒船、4艦全部引き連れてくるんすか……?」
ペリー「全艦率いてくるよ。この4艦は艦隊のごく一部だし。もっと増えるよね」
幕府側「あ……あ………が……」
ラディッツやっと倒したのに、次くるサイヤ人もっと強いパターンのやつ(わからない方は存分にスルーしてください)。
アメリカが……来年パワーアップして帰って来る……。
いよいよ迫られる本当の決断。
要求をのんで開国か、断って攘夷(外国人追っ払う)か。
仲良く or 戦争。
今度こそ……正真正銘のガケップチ――。
老中「阿部さん、どう…しましょ……?」
阿部「よし!!! 決めた!!」
老中「おっきい声!」
阿部「国開くか、戦争になるかはわからんが、今出来る最善のことをやる!!!」
阿部正弘、改革モード突入。
幕府のルールをブチ壊していきます。
老中「ちょちょちょ、ちょっと阿部さん! 御三家や外様と連携とってるらしいじゃないですか! マズいですよ! 幕府があの人たちの意見聞いちゃ!(エピソード0読んでね)」
阿部さん「確かにな」
阿部さんの部下「確かにって……こんな時こそ、優秀な人の意見が必要……。そういうことですか!?」
さらに、「外国人はゼッタイ追い払う!!」と叫んでる、とってもジョーイ(攘夷)おじさん
っていう御三家の人を、海防参与(ってポスト)に招き、幕府の政治に参加させます。
阿部さんの部下「阿部さーーーん! 意見聞くならまだしも、幕府の政治に参加はアウトです! 斉昭さん御三家ですよ!?」
阿部「そうだな」
阿部さんの部下「そうだなって……攘夷のカタマリみたいな斉昭さんを政治に参加させたら、みんなの『国を守る』って意識が高くなる……。そういうことですね!?」
阿部さん「フッ……」
阿部さんの部下「ニヒルな笑みでごまかさないでください!」
お次は、海防掛(かいぼうがかり。今で言う"防衛省"みたいなもんかな)ってやつに、身分も、年齢も関係なく、才能のある人をバッテキします。
永井尚志(ながいなおゆき)
大久保一翁(おおくぼいちおう)
岩瀬忠震(いわせただなり)
って人たち(他にもいるけど、このあと登場する人書いたよ)。
阿部さんの部下「阿部さん阿部さん阿部さん!! あんなどこの馬の骨ともわからないヤツら採用していいんすか!?家柄じゃなく、才能や能力を優先させるってことですか!?」
阿部「ヘッ!」
阿部さんの部下「『ヘッ!』じゃないですよ阿部さん!!」
まだまだ続くブチ壊し。
徳川幕府は、将軍や老中の決定が全てで、下の者の意見を聞く機会なんてありません。
それを、
阿部「みなさーん! 国の大ピンチです! みんなの意見を聞かせてください!」
阿部さんの部下「ちょっと阿部さん!! そんなことした…」
阿部「今は日本全体で力を合わせなきゃダメなときです! みなさん! 意見をお願いします! 身分なんて関係ありません! 大名だろうが、庶民だろうが、エラかろうが、エラくなかろうが、みなさんの声を大大大募集します!!」
【阿部正弘】意見募ってみた【幕末】
ガチでみーんなから意見募るんです。
ポンコツ意見もドシドシ届くんですが、大久保一翁さんや阿部さんは、ゴミ山の中からダイヤを見つけます。
『外国の攻撃を防ぐには軍艦がいるけど、今は江戸のガードを厳重にして、おいおい軍艦を用意しましょうや。
軍艦の製造と、それに関わる人件費ってやつにゃあ、ベラボーな金が必要だ。国民の税金からだと反発を招くことうけあいだから、開国して貿易で得た利益をその費用にあてるってのはどうだい。
それにだ、軍に関する制度や訓練を、西洋風に改革しなきゃなんねぇ。そのためには人材だ。最新の勉強ができる学校を設立した方がいいだろうな』
(もちろんこちらも丁寧に書かれてるよ。「おそれながら…」的なトーンで)
大久保一翁「な……なんじゃこりゃ!!」
阿部「素晴らしい意見書だ!! えーと、これ書いたやつの名前は……」
この海防意見書の作成者こそ、まだ幕府の下っぱ役人という立場だった
だったんです。(勝さんはこの意見書をキッカケに、幕府の中で出世していくよー)。
阿部さんの改革。
家柄が優先されるこの時代に、ルールや身分関係なく、優秀な人材と意見を集めるというやり方は、素晴らしいものだったと思います。
でもこのやり方には、とんでもないデメリットが待ち構えてました。
幕府って、200年以上も「将軍様の命令は絶対」方式でやってきたのに、みんなからの意見を募っちゃったことで、
「あれ? これ幕府決定力なくなってない? 力弱くなってんじゃん? これ、オレらも政治に口出せるぞ!!!」
という雰囲気が日本中に漂い、大名や朝廷ばかりでなく、もっと下の人まで幕府にもの申すようになる。
日本を思った阿部さんの行動で、圧倒的支配者だった幕府の権力が
音を立てて崩れ始めたんです……。
この時代、社会を風刺した"狂歌"ってやつが流行ってたんですが、有名なやつを一つ。
「泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん)
たった四杯で夜も眠れず」
"上喜撰"というのは高級茶のブランド名。
4杯飲んだらカフェインのせいで夜寝れないさまと、"蒸気船"が4隻やってきただけで、あわてまくってる幕府をバカにしてる、というのがかかっている歌です。
うまい。
ペリーちゃんの訪問をきっかけに、日本は、これまで体験したことのない世界に足を踏み入れることになります。
開国を迫る、アメリカという脅威。
はたして、日本が導き出した答えとは……(予告っぽいですが、予告です)。
【敷かれたレールの上を歩いてたらブッ壊れ始めたんです】
幕末について書いてみますね。
その名の通り、江戸幕府の末期を指して"幕末"って呼ぶんですが、すっごく魅力的な代わりに……とにかくややこしい。
以前少しだけ書かせてもらった戦国時代なんかは、おおざっぱに言うと、「攻めるぞー!」「勝ったー! 土地もらえたー!」「負けた〜」これだけです(これだけじゃないです)。
ところが幕末になると、武士だけの話じゃなくなり、"朝廷"や"外国"って存在がねっとり絡みついてくる。
その上、この国自体がどう進んでいくのかって物話だから、政治要素もてんこ盛り。
もう、ぐちゃぐちゃです。
ただ、
ぐちゃぐちゃだからこそ、おもしろい。
とんでもない大転換期だから、この国の未来を
本気で考えた英雄や勇者が、何人も、何人も、何人も、何人も登場して、
駆け引き、争い、裏切り、信頼を繰り返していく……
おもしろいに決まってます。
これから、そのぐちゃぐちゃにおもしろい幕末物語の流れを、ちょーおおざっぱに説明していくので、少しだけお付き合いくだされば幸いだなーって思ってます。
さて今回は、幕末物語に入る前に
「聞いたことあるような、ないような……で、これ何?」
って事柄を、説明していきますね。
今からお話しすることを知っとかないと、幕末というゲーム、一面もクリアできません(多分)。
それでもよくわからなかった場合は、
あれです、ネットで調べてください。
ですので、最初にお伝えしたいのは、
「インターネットは便利」
ということです。
では、幕末エピソード0
参ります。
まず最初、
「江戸時代とか徳川幕府とかって、マジ何のこと?」
です。
話は、今から500年以上前までさかのぼります(さかのぼらせてね)。
日本全国に"戦国大名"と呼ばれる武士が現れて、
『日本国内ずっと争いが続いてる』ジョータイ
の、"戦国"という時代がありました。
で、そんな時代にピリオドを打ち、「これに勝った方が、天下治めるんじゃね?」の戦いが行われたんです。それが
関ヶ原の戦い
って呼ばれてるやつ。
これでバトったのが、
です。
その結果は、
勝者:家康さん率いる東軍
でした(この辺は、『超現代語訳 戦国時代』をご覧ください。宣伝です)。
そこから、戦いに勝った家康さん、「土地を分けるよー」の作業を行うんですね。
家康「はい西軍のみんな並んでー。君たちは戦いに負けたから、土地をケズります。もしくは全部ボッシュー!」
西軍のみんな「え~~~!! マジかよーー!!」
家康「はい今度は東軍のみんな。みんなは頑張ってくれたから、土地を増やしてあげます!」
東軍のみんな「イッエーーーーイ!!」
ま、こんな感じ(カンタンに言うとですよ)。
そして、関ヶ原の戦いから3年後、家康さんはドラマなんかでもよく聞く、やたらエラいやつ
征夷大将軍(武士のトップだよ)
に任命されます。
で、"江戸"ってところに、
幕府(今でいう政府だねー)
を開く。
これで『徳川幕府』完成。
『江戸時代』のスタートです。
ただ、『幕府』わかっても、これ知らなきゃ、幕末が前頭葉を上すべりしていくので、覚えといてほしいのが
藩
ってやつです。
こちら、今でいう"都道府県"みたいなもん。
支配するエリアと、そこの組織のことを、"藩"って言ってたんです(長州藩とか薩摩藩とか言うアレ。当時、公式には"藩"って使ってなかったらしーけど)。
なので、藩と幕府、現代に置き換えると、
藩→地方自治体
幕府→行政はもちろん、法律も作るし、裁判もやる、とにかく権力がここに一点集中の、スーパー内閣
という感じになります(あくまでたとえね)。
関係性は、全国にそこそこ強ぇーやつらがいて、それをまとめてる、イッ…チバン強ぇーやつがいた、でほぼあってます(ちなみに、このシステム『幕藩体制』っていうよー)。
んで、声を大にして言いたいのはここから!(文章なんで、なんーの変化もありませんが)
さきほど藩は、「都道府県みたいなもん」とほざきましたが、あくまで"みたいなもん"です。
現代の都道府県と違って、そこには"種類"があり、"差"がありました。
その種類は、"徳川家康基準"で作られており、家康の……
一族んとこ!→ 親藩(しんぱん)!
家来んとこ! →譜代(ふだい)!
ごく最近家来になったとこ! →外様(とざま)!
ってカテゴリー分けがされています。
《親藩》
こちらは、徳川家康のお子さんや一族が藩主(=殿ね!)の藩です。
中でも、家康の子供が初代をつとめた
徳川御三家(とくがわごさんけ)
ってところは、特別扱いスペシャル親藩(尾張藩、紀州藩、水戸藩だよ)。
なんでスペシャルかって、「おい! 今の将軍に子供いねーぞ!」って緊急事態のときは、この御三家から養子が届いて、将軍になっちゃうからです(デリバリーされてたわけじゃないよ)。
さらに、江戸時代の途中に、「おい! 養子出すとこ、増やしといた方がいいんじゃねーか!」って理由で、御三家みたいな"家"が3つ増えます。
「聞いたことねーよ」って言われるの覚悟で書きますが、
御三卿(ごさんきょう)
というやつ(田安家、一橋家、清水家だよ)。
あまり知られてない御三卿かもしれませんが、この中の1つが、実は幕末に深く関わるお家なんです……。
どーれだ。
《譜代》
譜代は、家康さんのお家に、むかーしから仕えてきた家来が、藩主(=殿だよ!)になった藩です。
《外様》
一方、関ヶ原の戦い前後に、家康さんに従ったとこを"外様"って言います。
現代でも「よそ者」みたいな意味で、"外様"って使われますが、まさにそれ。
おんなじ外様でも、関ヶ原の戦いの前や最中に、
「やっぱ家康さんスゴいや! 家来にして!」
ってとこと、関ヶ原の戦いに負けて、
「負けたんで……仕方なく従いまーす……」
って感じの違いはあるんですけどね。
でね、幕府の政治をやっていのは将軍と、この中の藩のお殿様なんですが、それは……
譜代なんですよ。
なんか親藩の方が偉いっぽいから、幕府のことやってそうなイメージですけど、譜代なんです。
譜代は
老中(今で言う〇〇大臣)
や、
若年寄(老中の次に偉い)
というポジションになれる資格がありました。
かたや、親藩と外様の藩主は、幕府の政治にいーーっさい関わらない。てか関われない。
これ、なーんでか?
それはね、徳川家が、
〈地方大名の頃からのやり方を、天下取ったあとも続けてた〉
から。
戦国時代、徳川の家の政治や経営やってたのは、当然、家康とその家来ですよね?
徳川さんたら全国統一したあと、そのやり方を、そのまま大きくしちゃいます。
だから、幕府の政治をやるのも、徳川家のトップ(将軍)と家来(譜代)になった、というわけです。
これ、現代で考えても「あ、まーね」となります。
どこぞの社長を想像してみてください(社長の方はご自分を当てはめて)。
会社を動かすのは、社長(将軍)と社員(譜代)。
社長の子供たちや親戚の人(親藩)は、当然その会社の経営とは無関係ですよね(一族経営やコネ入社は別ね)。
ましてや、最近知り合った外部(外様)の人になんか、経営を任せるわけありません。
これとまったく同じ原理です。
幕府の政治をする権利を、親藩、外様に、一切与えない。口出し無用。
このルールを守り続け、200年以上むっちゃくちゃ強い権力を保っていたのが徳川幕府という機関……声を大にしたんで、是非覚えといてください(文章なんでカロリー使ってませんが)。
以上、『幕府と藩。切っても切り離せない互いの慕情』でした。
さて、ここまでは全部"武士"のお話。
幕末には、そうじゃない人たちも大いに絡んできます。
お次は
「『朝廷』って………………なに?」
です。
朝廷(ちょうてい)ってのは、天皇をトップとした、公家(くげ。貴族さん)たちがいる政府のこと。
ん? 幕府も政府で、朝廷も政府?
政府が2つあったの?
あったんです。
おじいちゃん(誰かの)「遠い昔、政治は朝廷が行ってた。でもね、日本の歴史に武士が登場すると、政治をする権限が、そっちに流れていっちゃったんだ。ショギョームジョーだね」
孫(どこかの6さい)「じゃ、朝廷ってなくなったの?」
おじいちゃん「いいや。朝廷はちゃーんと残ってる。
役職や地位……官位ってのがあるんだけどね、これを授けるのは、朝廷であり、天皇なんだよ。それは戦国でも、幕末でもずっとそう」
孫「そうなんだー。今でも、内閣総理大臣は、民主主義的に選ばれるけど、任命するのは天皇だもんね。そんな感じ?」
おじいちゃん「そ……すごいね……確かにそんな感じだよ。
幕末も、朝廷は政治をやってなくて、幕府に任せてたんだ。言い方悪いけど、当時の朝廷は、
『勢いはなくなったけど、ずっと残ってる老舗ブランド』、そんな感じだね」
孫「では……」
おじいちゃん「では!?」
孫「では、本来は、『将軍も、幕府という政府機関も、全国の武士全員も、みんな朝廷に仕える身で、天皇の家来』ということですね」
おじいちゃん「……もう気持ちわりぃよ……大正解だよ……。
本来はそうなんだけど、政治をしてたのは幕府、権力を振りかざすのも幕府だったんだ。
学校の部活とかでも、
『定年間近のスポーツの知識ゼロの美術の先生が、バスケ部の顧問』みたいなことあるでしょ?
形上、先生はバスケ部の監督だけど、ホントにその部を仕切ってるのは、キャプテンなんです、的な。
練習メニュー考えるのも、試合中の指示も、そのキャプテンが全部やる。 まあ、それと似てるかもね」
孫「んー……部活よくわかんない……」
おじいちゃん「そこは6歳かい!」
孫「あ! スラムダンクの藤真ってこと?」
おじいちゃん「おじいちゃん、それ知らねーや」
というのが、朝廷と幕府の関係性でした(わからなかった方、ここですよ、ネットの出番は)。
続いては、"単語"。
とんっ……でもねー頻度で登場するから、こいつらだけは、もー先に解説します。
『尊王(そんのう)』
天皇を敬うという考え。
これ本編でメッチャ出てきます。
『攘夷(じょうい)』
"夷"っていうのは、"夷狄(いてき)"っつって、外国人のことです。
外国人を攘(はら)う。
つまり、「外国人を追っ払え!」ってことですね。
これも本編でメッチャ出てきます。
『尊王攘夷(そんのうじょうい)』
尊王と攘夷の合体技。
「王(天皇)を尊び、外国の人を追い払え!」
って意味。
まんまです。
何を隠そう、本編でこれが1番出てきます。
この考えを持った人を
なんて呼んだりするんで、要チェックです。
幕末ってのは、やたら
「攘夷だ! 攘夷!」
って言葉が飛び交い、
「もう幕府なんかに政治を任せてらんねー!」
という展開になっていきます。
ネタバレちっくですが、歴史って全部ネタバレしてるもんなんで。ええ。
ちなみに、『鎖国』や『倒幕』といった重要ワードは、エピソード1以降、流れでご説明したいと思いますので、乞うご期待。
それでは最後に、幕末を色濃く彩った"藩"のバックボーンをご紹介して、エピソード0に終止符を打たせていただきます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。先に言っときました。
【薩摩藩(さつまはん)】
現在の鹿児島県と宮崎県の南西部を領地として持っていたプラス、沖縄県(琉球王国)も支配下に置いた藩です。
藩主の「島津」さんてのは、戦国時代に、九州統一目前まで迫ったちょーやり手。
関ヶ原では西軍についちゃったんで、負けた側です。
なので、家康さんから土地を減らされることに……
なってません。
これが、なってないんです。
ハイレベルな交渉を繰り返し、家康さんに、
家康「もう……じゃいいよ! 島津くんとこの土地はそのまま!」
と言わせちゃいました。
西軍の大名がバシバシ土地を減らされる中、唯一自分たちの領地を守りきったミラクル集団……。
そのおかげで、薩摩は全国の中で、No.2の石高を持つ藩になります(とにかく"でっけー藩"て覚えれば大丈夫です)。
それが幕末まで続き、特に力を持つ藩となった……
これが、薩摩藩です。
【長州藩(ちょうしゅうはん)】
戦国時代、安芸(広島県)に毛利元就というカリスマが登場して、中国地方ほぼ全域を治めちゃいます。
その孫の輝元ちゃん、関ヶ原では西軍の総大将をやっちゃったから、
家康「はい、減らすー」
フツーに土地減らされます(もしかしたら減らされないかも? って瞬間はあったんですけどね。やっぱダメー)。
しかも、グヮバッ! と減らされて、元の領地の
約4分の1
になってしまいました。
そのことがあってか、外様の藩として江戸時代を過ごす長州藩には、「これよっぽど恨んでるよ…」ってエピソードが。
毎年の年始の挨拶のとき……。
家臣「殿、今年はいかがいたします?」
殿「いや、まだじゃ」
これはつまり、
家臣「殿、今年は徳川を討ちますか?」
殿「いや、まだその時期ではない」
という意味。
何代にも渡って、200年以上このやり取りをやってるなんて、もう褒めてあげなきゃのレベル。
でも、多分この話はウソかもなんですって。
「長州藩、こんな気持ちだったよー」って表すために、誰かが作ったのかな?
【土佐藩(とさはん)】
もともと土佐を治めていたのは、長宗我部(ちょうそかべ)さんて大名。
しかし、こちらも関ヶ原の戦いで西軍についたため、土地を減らされ……るどころじゃなく、
なんとボッシューされちゃいます。
そう、土佐から長宗我部さんいなくなるんです。
で、その土佐を、家康からもらったのが、山内さんて大名。
山内さんは徳川家に恩がありますから、代々、幕府LOVEっていうのを覚えておいてもらうと助かります。
そして、土佐藩といえば、日本史の中でも1位、2位を争う、人気の"あの人物"を生んだ場所……。
それは本編が始まってからのお楽しみです(ま、バレてるでしょうが)!
【会津藩(あいづはん)】
現在の福島県西部と、新潟県、栃木県の一部を治めたのが会津藩です。
2代将軍徳川秀忠には、静という女性にこっそり産ませた男の子がいました。
秀忠「言うなよ! 別に、江(ごう。秀忠ワイフ)が怖いってわけじゃないぞ。とにかくお前らだけで止めとけ! 最悪、他のヤツにバレたとしても、江が怖いってわけじゃないけど、江にだけは知られるなよ!」
家臣「……別に誰にも言わないすけど……素直に怖いって言えよ」
江が怖かったどうかは定かじゃありませんが、このことは、数名しか知らない事実。
しかし、3代将軍徳川家光はあるとき、
家光「え? オレに腹違いの弟いるの? ……親父ぃ~」
知っちゃいます。
その後、異母弟
保科正之(ほしなまさゆき)
に会った家光は、
家光「すっごいいい感じの異母弟じゃん。気に入ったよ異母弟! じゃ異母弟は会津藩の藩主!」
お気に入りすぎて、会津藩の藩主にバッテキしちゃいます。
家光、は亡くなる直前でも正之に
「異母弟……宗家(本家だよ)を頼む」
と伝えるほど、弟を信頼していたのでした。
自分を取り立ててくれ、頼ってくれた家光に深く感謝した正之は
『会津家訓十五箇条(あいづかくんじゅうごかじょう)』
というものを作ります。
その第一条には、
『徳川の将軍に、一生懸命尽くすべきで、それは、他の藩と同じ程度で満足するようなものじゃダメだよ! もし、将軍家にそむいたり、裏切ろうとする藩主がいたら、そんなヤツは私の子孫じゃない! みんな、そいつに従ってはダメだからね!』
って感じのことが書かれてました。
何があっても徳川幕府に忠誠を誓う――。
この家訓を代々ちゃーんと守り続けていったのが会津藩なんですが、幕末では、これが思わぬ障害になっちゃうのでした……。
というわけで、主要な藩の性格を、むちゃ簡単にご紹介したところで、エピソード0終了。
そして次回から、本当のエピソードが動き出します……。
幕末は、江戸時代の末期、幕府の末期です。
どんなに揺るがないものでも、時を重ねれば、ほころびが生じてきます。
200年以上という長い時間を経過した幕府にも、あちらこちらにほつれが出ていたのです。
そこへ、ダメ押しとなる存在が登場。
"彼"が、大きな船を4艦従えてやってくるところから、それはスタートします……。