【漆黒が来た! え、なに?……「オトモダチニナリマショ」って言ってる!】
幕末という時代を語る上で、このワードだけは避けて通れないってのが、そう
鎖国(さこく)。
こちらも
「あのーあれだろ…。日本があのー、、引きこもったやつだろ」
みたいなイメージの人が多かったりするんで、ちょいと説明させていただきます。
大多数の人が、
「海外との貿易を一切やってない」
という印象だと思いますが、これ実は正確じゃないんですよ奥さん(奥さん以外にもお伝えしたい)。
正解は、
「鎖(とざ)してないんだけどなぁ……でも鎖されてるって言われても、まぁ……しょうがないか」
です。
実は幕府、"相手"と"場所"を絞って、
海外貿易やってたんです。
長崎(ながさき)――オランダや中国
対馬(つしま)――朝鮮
薩摩(さつま)――琉球
蝦夷(えぞ)――アイヌ
という、限定キャンペーンで(ちなみにこの4つの場所を、"四つの口(四口)"なんて呼んだりするよー)。
だとすると、ギモンに思っちゃうのは、
「なんで欧米とは関わらず、限られた相手とだけの貿易だったの?」
これでございまさぁーね。
それにはこんなような理由が存在していたんです。
◆理由その1
かつてはポルトガルやスペインなんかも、日本に来てたんです。
でもそこでネックになったのが、"キリスト教の布教"ってやつ。
幕府、ふと思ったんです。
幕府「日本がキリスト教徒だらけになったら、支配しにくいよなぁ…。そいつらが団結して反乱とか起こしたら、もう最悪……
は! てかヨーロッパの奴ら、この国を侵略する準備のために、キリスト教を送り込んたんじゃ…?
で、信者が増えたタイミングで軍隊がやってきて…………
禁止ーーー!!! キリスト教も、外国の船が来るのも禁止!! 日本人が勝手に海外へ行くのも禁止!! すでに行っちゃってるやつが日本に戻って来るのも禁止!!」
となったわけです。
◆理由その2
もし大名が、勝手に外国と貿易しちゃったら……。
幕府、ふと思ったんです。
「そこの藩がお金もうかって、力つけちゃって、幕府に歯向かってくるんじゃね? ……
禁止ーーー!!! 外国と勝手に貿易するの禁止!!
ん? 逆に言えば、外国との貿易を幕府が仕切ったら、幕府だけ潤うんじゃね? ……
認めるーーー!! 幕府が許した貿易だけは認める!!」
となったわけです。
だから、"幕府と幕府が認めた藩"のみが、"キリスト教を信仰してない中国や朝鮮"とだけ貿易してたんですね。
良い質問する人「ちょっと待って。オランダもキリスト教を信仰してる国だよね? なんで日本と貿易できてんの?」
それはですね……
オランダの人「キリスト教の布教とかしないっす! 自分ら純粋に貿易だけがしたいっす! 目を見てください!」
幕府の人「……キレイな目~。いいよ! 長崎住んで貿易しな!」
オランダの人「オー! ダンクユーヴェル!!」
幕府の人「うん! なんて言ったんだい?」
という感じで、日本との貿易を続行出来たんです(最初『平戸』、そのあと『出島』ってとこにうつるよー)。
なので、オランダ以外の"欧米"から見た日本は、
「……だ、国閉ざしてんじゃん! 鎖国じゃん! そう言われても仕方ないことしてるよ!」
となってたわけです。
でも、日本が鎖国やっちゃってる間、海の向こうでは、
「ウソ……でしょ……」
という変化が起こっていました。
アメリカやフランスでは、支配者と戦い、王様を追い出し、市民が政治に参加するようになった戦争が起こります。
これを
「この支配からの卒業戦争」
と言います(ウソです。『アメリカ独立戦争』とか『フランス革命』ってやつです)。
またイギリスでは、工業が機械化して、移動手段がちょー便利になった革命が起こります。
これを
「ちょー便利になった革命」
と言います(もちろんウソです。『産業革命』ってやつです)。
蒸気機関ってのが開発され、機械で動く蒸気船や、蒸気機関車が登場。
民主的になって、科学的になった欧米のみなさんは、近代化にこれからもどうぞよろしくねしちゃってたんです。
何もかもが、違います。
今までと何もかもが。
中2や高2の夏休み明けで、やけに大人びて登場する同級生よりも違うんです(ここは、みんな、各々のたとえを見つけてみてください)。
この変化、現代人が、PC、ネット、スマホを体感した時の衝撃と、どちらがすごかったんでしょう(どう思います)?
そして、日本が"江戸ってる"間、新しい時代へ突入したヨーロッパ&アメリカは、次なる行動に。
新しい市場と、原料をゲットできる場所、いわゆる
"植民地(その領土、支配しちゃうぜ)"
を求めて、海へとお出かけ。
ターゲットとなったのは……
アジアっす。
中国にはイギリスが来て、アヘン戦争ってのが起こりもう大変(これホント大変なの)。
日本「え!? あの強かった中国が負けた!?」
ビビりまくってる日本にも、ロシア、フランス、アメリカ、イギリスの船が現れ
欧米「仲良くしてくれよ!!」
日本「いや、無理よ!!」
こんなやり取りが繰り返されていました。
そんな中、ついに"あの艦隊"がやって来て、日本の運命、
変わります。
嘉永6年6月3日(1853年7月8日)、
夏の日、夕方。
やがて"それ"は、浦賀の人たちの目にとまります。
ナニカ……チカヅイテル…………。
静かにザワっとする浦賀。
マックロデ、デカクテ……
驚きと恐怖を少しずつ確認する浦賀。
バケ……モノ…………?
得体が知れなくて、ナニがナンだかさっぱりわからないけど、とにかく叫びたい……
浦賀の人たち「なんだアレはーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
デカい大砲を積んだ、バカデカくて黒い船の一団。
乗っているのは、
マシュー・カルブレイス・ペリー
(ジョンレノンかペリーかってくらい有名人)。
幕末の激動をアメリカから運んで来た"黒船来航"の瞬間。
浦賀の人「な、なんだアレ!? 船…だよな……? デケーー!」
浦賀の人「黒い船が黒い煙上げてる! キモーい!」
浦賀の人「おい! おい!! 波とか風とか関係ナシに進んでんぞ! 怖ぇーー!」
浦賀の人たち「デケーー!! キモーい!! 怖ぇーーー!!!」
日本人にとっては初めて見る蒸気船。
もちろん浦賀の騒然、とまりません。
勝手にグイっと入ってきた黒船たちに、浦賀奉行所(お役人)のみなさんも慌てフタめきちらします。
ちっこい船を近づけ『帰って! ここに停まらないで!』と紙に書いたメッセージ(フランス語だったらしい)を掲げますが、黒船の人たちガン無視。
その中で、役人の
中島三郎助(なかじまさぶろうすけ)さんは、
通訳さんを連れて黒船にちょー接近します。
通訳「あのー! 私オランダ語はできますー! 船に乗せてもらえませんかー!?」
黒船の人「ダメです。浦賀のちょーエラい役人さんとじゃなきゃ話しません」
通訳「……まいったなぁ」
中島「なんだって?」
通訳「エラい人とじゃなきゃ喋らないそうです……」
中島「あ、そう……。ま、じゃいいや、オレのこと副奉行って伝えて」
通訳「え? 中島さん副奉行じゃないじゃん」
中島「そうだよ。でも乗せないってんならしょうがねーじゃん」
通訳「……ま、しょうがないか。すいませーん! この人! 隣のこの人! 浦賀奉行所のNo.2ですー!」
黒船の人「乗りな」
乗れました。
ウソついたら(No.2ってウソついたのはホント)。
黒船の人「うちのペリーさんは、アメリカ大統領のお手紙を日本の将軍に渡すためにやって来ました」
中島「そうすか。でも日本の法律で、そういうのは長崎でしか交渉できないんで、長崎に行ってください」
黒船の人「やだ」
中島「え、やだなの?」
黒船の人「江戸に近いから浦賀に来たんだもん。長崎にはいかない。あと、今うちらの船を取り囲んでる日本の船たち追っ払ってちょーだい。サイアク攻撃するよ」
中島「ゲッ! みんなとりあえず帰ってー! 撃たれるんだってー! (周りの船いなくなる)とにかく私じゃ決められないんで、明日、上の役人が来るようにします」
あくる日。
香山「中島より立場が上の、No.1。香山と言います(これまたウソ。中島さんと立場は一緒)。お手紙を受け取るかどうか、江戸にお伺いを立ててみます。なので、返事くるまで4日待ってもらえませんか?」
黒船の人「は? この船だと1時間で江戸にいけるんだ。4日間なんて待てるわけない!」
香山「1時間で……!? じゃ、4日なんて待てませんよね……」
黒船の人「4日は無理だ。3日待ちます」
香山「あ、3日は待てるんだ!? え…と……ありがとうございます……」
3日間待ってもらえました(らしいっすよ)。
一方その頃、「アメリカ艦隊が来た」という報せを受けた幕府は……
「アメリカが!!!? やっぱりなーー!!! 」
そう、実は幕府、アメリカが来ることを事前に知ってたんです。
教えてくれたのは
オランダ「幕府ちゃん! アメリカが、開国を迫りに、近々日本を訪れるらしいよ!!」
仲良しオランダちゃん("オランダ風説書(ふうせつがき)"、"別段風説書(べつだんふうせつがき)"って書類が定期的に届いてたんだよー)。
予想通りにやって来たアメリカは、こっちの法律ムシして浦賀に現れ、大砲積んだとんでもねー船をバックに、手紙を受け取れと迫ってくる。
幕府は認識します。
「あ………これ脅されてるわ」
老中1「どーーーーーすんだよ!!! ペリーとかいうやつ、浦賀あたりで手紙受け取れって言ってんぞ!!!」
老中2「ダメに決まってんだろ!! 呼ばれてもねーのに飛び出てジャジャジャジャーンな欧米とは、長崎でしか対応しないって法律だろ!!」
老中1「んじゃ断って大砲撃たれて戦争になってジャジャジャジャーンでもいいんかテメーは!!」
老中2「そうとは言ってねーよ! てかジャジャジャジャーンてなんだ!」
老中1「オメー発信だよ!!」
危機的状況にジャジャジャジャーンが止まらない幕府ですが、
老中首座(今でいう内閣総理大臣かな)
阿部正弘(あべまさひろ)
さんて人、バシッ! と決めます。
阿部「みんな静まれ!! いいか、外国とのやり取りはすべて長崎で行うと決まってる! 浦賀で手紙を受け取ることなんてできない! …だからもう今回だけだ!!」
法律まげることを決めます。
結局、お手紙は浦賀付近で受け取ることに。
老中「阿部さーん!アメリカ大統領からの親書(お手紙)届きましたーーーー!!!」
阿部「そうか! なになに……
『アメリカ合衆国大統領 フィルモアより 日本の皇帝陛下(徳川将軍のこと)へ
ねー、アメリカとお友達になって、商業上のお付き合いをしません?
(長いのではしょります)
アメリカさー、中国に行ったり、捕鯨(クジラ捕まえちゃう)したりすんの。
だからもし、日本の近くで船が難破したら、乗っていた人を保護してあげて欲しいんだ。
あと、航海が長いから、日本で一休みさせて。そんときお支払いはするから、石炭ちょーだい、食料ちょーだい、水ちょーだい。港開いてちょーだい、貿易してしょーだい。フィルモアでした』
……厚かましいわーーー!!!」
(もっと丁寧な文章で、もっと長いす。要点だけまとめると、こんな感じ。)
予想通り、「国開いてくれよー」的な文章。
お手紙読んで、幕府はゲロへこみ。
しかし、そんなゲロ幕府のみんなを勇気づけるように、阿部さんはドシャッ! っと決めます。
阿部「お手紙受け取ったんだから、ソッコー帰ってもらおう! で、その後どうするか考えよう!!」
後回しにすることを決めます。
幕府は、そっちの要求飲んだんだから早く帰ってくれと、ペリーさんにお願い。
ペリー「いいけど、手紙の答えをもらいに、来年の春またくるからね」
幕府側「……黒船、4艦全部引き連れてくるんすか……?」
ペリー「全艦率いてくるよ。この4艦は艦隊のごく一部だし。もっと増えるよね」
幕府側「あ……あ………が……」
ラディッツやっと倒したのに、次くるサイヤ人もっと強いパターンのやつ(わからない方は存分にスルーしてください)。
アメリカが……来年パワーアップして帰って来る……。
いよいよ迫られる本当の決断。
要求をのんで開国か、断って攘夷(外国人追っ払う)か。
仲良く or 戦争。
今度こそ……正真正銘のガケップチ――。
老中「阿部さん、どう…しましょ……?」
阿部「よし!!! 決めた!!」
老中「おっきい声!」
阿部「国開くか、戦争になるかはわからんが、今出来る最善のことをやる!!!」
阿部正弘、改革モード突入。
幕府のルールをブチ壊していきます。
老中「ちょちょちょ、ちょっと阿部さん! 御三家や外様と連携とってるらしいじゃないですか! マズいですよ! 幕府があの人たちの意見聞いちゃ!(エピソード0読んでね)」
阿部さん「確かにな」
阿部さんの部下「確かにって……こんな時こそ、優秀な人の意見が必要……。そういうことですか!?」
さらに、「外国人はゼッタイ追い払う!!」と叫んでる、とってもジョーイ(攘夷)おじさん
っていう御三家の人を、海防参与(ってポスト)に招き、幕府の政治に参加させます。
阿部さんの部下「阿部さーーーん! 意見聞くならまだしも、幕府の政治に参加はアウトです! 斉昭さん御三家ですよ!?」
阿部「そうだな」
阿部さんの部下「そうだなって……攘夷のカタマリみたいな斉昭さんを政治に参加させたら、みんなの『国を守る』って意識が高くなる……。そういうことですね!?」
阿部さん「フッ……」
阿部さんの部下「ニヒルな笑みでごまかさないでください!」
お次は、海防掛(かいぼうがかり。今で言う"防衛省"みたいなもんかな)ってやつに、身分も、年齢も関係なく、才能のある人をバッテキします。
永井尚志(ながいなおゆき)
大久保一翁(おおくぼいちおう)
岩瀬忠震(いわせただなり)
って人たち(他にもいるけど、このあと登場する人書いたよ)。
阿部さんの部下「阿部さん阿部さん阿部さん!! あんなどこの馬の骨ともわからないヤツら採用していいんすか!?家柄じゃなく、才能や能力を優先させるってことですか!?」
阿部「ヘッ!」
阿部さんの部下「『ヘッ!』じゃないですよ阿部さん!!」
まだまだ続くブチ壊し。
徳川幕府は、将軍や老中の決定が全てで、下の者の意見を聞く機会なんてありません。
それを、
阿部「みなさーん! 国の大ピンチです! みんなの意見を聞かせてください!」
阿部さんの部下「ちょっと阿部さん!! そんなことした…」
阿部「今は日本全体で力を合わせなきゃダメなときです! みなさん! 意見をお願いします! 身分なんて関係ありません! 大名だろうが、庶民だろうが、エラかろうが、エラくなかろうが、みなさんの声を大大大募集します!!」
【阿部正弘】意見募ってみた【幕末】
ガチでみーんなから意見募るんです。
ポンコツ意見もドシドシ届くんですが、大久保一翁さんや阿部さんは、ゴミ山の中からダイヤを見つけます。
『外国の攻撃を防ぐには軍艦がいるけど、今は江戸のガードを厳重にして、おいおい軍艦を用意しましょうや。
軍艦の製造と、それに関わる人件費ってやつにゃあ、ベラボーな金が必要だ。国民の税金からだと反発を招くことうけあいだから、開国して貿易で得た利益をその費用にあてるってのはどうだい。
それにだ、軍に関する制度や訓練を、西洋風に改革しなきゃなんねぇ。そのためには人材だ。最新の勉強ができる学校を設立した方がいいだろうな』
(もちろんこちらも丁寧に書かれてるよ。「おそれながら…」的なトーンで)
大久保一翁「な……なんじゃこりゃ!!」
阿部「素晴らしい意見書だ!! えーと、これ書いたやつの名前は……」
この海防意見書の作成者こそ、まだ幕府の下っぱ役人という立場だった
だったんです。(勝さんはこの意見書をキッカケに、幕府の中で出世していくよー)。
阿部さんの改革。
家柄が優先されるこの時代に、ルールや身分関係なく、優秀な人材と意見を集めるというやり方は、素晴らしいものだったと思います。
でもこのやり方には、とんでもないデメリットが待ち構えてました。
幕府って、200年以上も「将軍様の命令は絶対」方式でやってきたのに、みんなからの意見を募っちゃったことで、
「あれ? これ幕府決定力なくなってない? 力弱くなってんじゃん? これ、オレらも政治に口出せるぞ!!!」
という雰囲気が日本中に漂い、大名や朝廷ばかりでなく、もっと下の人まで幕府にもの申すようになる。
日本を思った阿部さんの行動で、圧倒的支配者だった幕府の権力が
音を立てて崩れ始めたんです……。
この時代、社会を風刺した"狂歌"ってやつが流行ってたんですが、有名なやつを一つ。
「泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん)
たった四杯で夜も眠れず」
"上喜撰"というのは高級茶のブランド名。
4杯飲んだらカフェインのせいで夜寝れないさまと、"蒸気船"が4隻やってきただけで、あわてまくってる幕府をバカにしてる、というのがかかっている歌です。
うまい。
ペリーちゃんの訪問をきっかけに、日本は、これまで体験したことのない世界に足を踏み入れることになります。
開国を迫る、アメリカという脅威。
はたして、日本が導き出した答えとは……(予告っぽいですが、予告です)。